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Yoshimi Hayashiに関する学芸員テキスト
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芸術は経験である
Yoshimi Hayashiは2007年、当館での滞在制作において黒板に白のチョークで「alone by myself all by myself(一人だけで、全て自分で)」の言葉を繰り返し描いた。言葉は、彼がアイディアや空間について考えたときに漠然と思い浮かぶものであり、自身の存在状態に挑みかけ、ときとして世界観をも変えるものである。言葉は写経(2017年に制作された作品には般若心経の言葉が繰り返された)のように、またアメリカで悪いことをした子どもが何回も書かされる反省の言葉のように忍耐強く繰り返される。描くことで心を浄化し、世界を把握し発見していく。チョークという素材は消えるかもしれない「はかなさ」を強調する。2016年の滞在制作では同作品画面中央に描かれた文字が「X」の形に消される。もしくは余白の空間が現れる。この「X」と同じサイズのくぼみが、美術館の中庭と町内を流れる千曲川の中洲に彼の手によって現れた。中庭の「X」は表情を変え今も在り続け千曲川の「X」は増水した水に文字のようにかき消された。そして、本展出品作では、同じサイズの「X」を小海町と東御市の高校生が共同制作し展示する構想だ。作品の構成を整理してみる。黒板に描かれた文字、文字が消されて現れた余白、余白に対応している現実の空間。そして黒板の「作品」と現実の空間を取り巻く空間。すなわち彼が重視する見る側の経験と時間である。さらに本展では地域に関係する別の制作者の経験が加わることになる。
日本に生まれたYoshimi Hayashiは、6歳のとき家族でアメリカ合衆国カリフォルニア州に移住する。アメリカで心理学と美術史を修め、日本の陶芸、茶道、遍路、空手を経験し、アメリカの広大な自然のなかでサーフィンやサイクリングを楽しむ。経験を通して自然を理解し、素直に作品をつくる。ランド・アートからサイト・スペシフィック・アート(その場所固有の芸術)を経た彼の作品は、経験の重要性と、芸術は生きることと同様に自由でなければならないことを教えてくれる。
日本に生まれたYoshimi Hayashiは、6歳のとき家族でアメリカ合衆国カリフォルニア州に移住する。アメリカで心理学と美術史を修め、日本の陶芸、茶道、遍路、空手を経験し、アメリカの広大な自然のなかでサーフィンやサイクリングを楽しむ。経験を通して自然を理解し、素直に作品をつくる。ランド・アートからサイト・スペシフィック・アート(その場所固有の芸術)を経た彼の作品は、経験の重要性と、芸術は生きることと同様に自由でなければならないことを教えてくれる。
中嶋 実 (小海町高原美術館)
Art is Experience
It has been more than ten years ago that Yoshimi HAYASHI has been organizing exhibitions and creating his works, while staying in Nagano Prefecture, Japan. In this exhibition his new works will be introduced which exhibit the combined efforts of his usual local process in Nagano Prefecture and the experience of collaborating with local high school students. Born in Japan, Yoshimi HAYASHI moved to California with his family when he was six years old. He studied psychology and art history in the U.S., experienced Japanese ceramic art, tea ceremony, participated in the Shikoku Pilgrimage and studied Karate in Japan. While in the U.S., he enjoyed surfing and cycling as well. He came to understand nature based on his experiences in both countries and, from that standpoint, genuinely set off to create art. His works suggests to us the importance of experience and that art must be created freely in the same sense as we strive to live.
Nakajima, Minoru (Koumi-machi Kougen Museum of Art)