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源馬 菜穂に関する学芸員テキスト
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自然に在る-源馬菜穂
源馬菜穂は、自身の理想として「自然の景色をみているときと同じような感覚をいつか描きたい」と語る。長野県諏訪市に生まれ育った源馬は、愛知県立芸術大学に入学。人物や風景を主に描き、やがて人物の背景として風景を描いていく。さまざまな表現に触れるなかで、自身が絵のなかで何を表現するかを悩んだが、感じた気持ちを描くことを優先し、本当に必要なモチーフや手順が見えはじめると、それまで作品のなかで静かに佇んでいた人物は軽やかに動き出し、次第に周囲の風景も大きなストロークの筆使いで流れが生まれていった。はるひ絵画トリエンナーレで大賞を受賞した≪contact≫では、勢いのある筆致で表現された大気の流れと草の波に、身を委ねるように人物がいる。風景と人が一体となっていくようなこの作品は、源馬が絵のなかの人物になったつもりで描いたという。
≪冬の諏訪湖、朝焼け≫は、「朝焼けでピンクに染まっている諏訪湖」というイメージから生まれた。この作品に人物はなく、御神渡りが出現した諏訪湖をやわらかい色彩で表現している。源馬は「かつては人が重要で風景は背景的だったが、人と風景が同列になり、最近は人が見ている風景という意識から、人のいる風景もいない風景もそれほど変わらなくなった」と振り返る。
源馬は、自身が見た景色や、音楽、自身によるスナップ写真などから、イメージを生み出して描くという。「自分の心を描きたいとかではない。心も人も自然も全部一緒。そのうえで、自分が良いと思う感覚を描きたい」と語る。また、卵テンペラや水彩絵具、オイルパステルなどの画材を取り入れ、画材が生み出す偶然性と自身のイメージを重ね紡ぐなかでも新しい何かを探している。
故郷について源馬は「諏訪湖を囲む四方の山、きれいな空気、美しい光があって、素敵な景色が存在している」とし、自身の心のなかには、故郷で育まれた感動や感覚があると話す。その思いとともに、源馬は自身の理想に向かって、これからもわれわれに新たな風景を感じさせてくれるに違いない。
≪冬の諏訪湖、朝焼け≫は、「朝焼けでピンクに染まっている諏訪湖」というイメージから生まれた。この作品に人物はなく、御神渡りが出現した諏訪湖をやわらかい色彩で表現している。源馬は「かつては人が重要で風景は背景的だったが、人と風景が同列になり、最近は人が見ている風景という意識から、人のいる風景もいない風景もそれほど変わらなくなった」と振り返る。
源馬は、自身が見た景色や、音楽、自身によるスナップ写真などから、イメージを生み出して描くという。「自分の心を描きたいとかではない。心も人も自然も全部一緒。そのうえで、自分が良いと思う感覚を描きたい」と語る。また、卵テンペラや水彩絵具、オイルパステルなどの画材を取り入れ、画材が生み出す偶然性と自身のイメージを重ね紡ぐなかでも新しい何かを探している。
故郷について源馬は「諏訪湖を囲む四方の山、きれいな空気、美しい光があって、素敵な景色が存在している」とし、自身の心のなかには、故郷で育まれた感動や感覚があると話す。その思いとともに、源馬は自身の理想に向かって、これからもわれわれに新たな風景を感じさせてくれるに違いない。
前田 忠史 (茅野市美術館)
Being in Nature
GENMA Naho expresses her wishes in these words, “Someday, I would like to embody the same feeling which I feel while I’m looking at the scenery found in nature,” as her ideal. Previously, she placed more importance on people in her paintings and sceneries were simply backgrounds for her. Then, people and sceneries took on equal importance in her works. Recently, she began to draw only sceneries, reflecting her view point that scenery is experienced by people. GENMA endeavors to depict her art works with her own preferred intuition based on the thought, “Mind, people, nature, and all things together.” GENMA, who was born and raised in the affluent natural environment of her hometown, believes there are certain indigenous inspirations or senses that abound in the area.
With such a thought in mind, GENMA endeavors to depict new sceneries following her own ideal.
With such a thought in mind, GENMA endeavors to depict new sceneries following her own ideal.
Maeda, Tadafumi (Chino City Museum of Art)