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平林 孝央に関する学芸員テキスト
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少女を描く−平林孝央
平林孝央の作品には、その多くに少女が描かれている。少女たちは、小人のようなサイズで大輪の花のうえに寝そべり、巨人の大きさで森を見おろす。日常生活では目にすることのない豪奢なドレスを身にまとう姿は、どこか非現実的だ。
少女とは不思議な存在である。普通、7歳前後~18歳前後の成年に達しない女子のことを指すが、自覚をもって少女になるわけでも、少女を卒業するわけでもない。気付けば少女だと認識され、いつの間にか女性として扱われるようになる。それは少年も同じくだが、声変わりのように大人に近づいたという印象を周りに与える要素が少ない分、いつからいつまでが「少女」なのか、より曖昧だ。
平林は、そんな少女の客体性・空虚さを表現したいと考えている。いわゆる大人の女性であるモデルを少女に近づけるための作用として、現実とは少し違う世界を描き出している。その空間を表現するための手がかりとして、生まれ育った諏訪の地にある神社や道祖神を取材、そこで目に留まった植物や石、木片なども作品に描き込んでいる。諏訪の原始信仰や縄文文化にも興味を持っており、自身の幼少期からの記憶や経験が作品に反映されている。
そもそも道祖神などに興味を抱いたきっかけは、東日本大震災だった。荒む町の辻に佇む石仏に花などが供えられているのを見て、物資も満足に手に入らないときでも人びとが祈りを捧げる姿、そしてそんな対象に成り得る石仏に感動した。その石仏が、そこでこれから先も土地の歴史を見守り続けるということを考えるとなおさらだ。
そのような存在を自分でも創り上げたいと制作を続ける。少女を描くのも、現実世界とは少し違う世界を描くのも、そういった心の拠りどころとなるものは少し曖昧な方が、自身の気持を投影できる余地があるからかもしれない。作家が生きる現代だけでなく、その土地の歴史、そしてそこから脈々と続いていく未来をも見据えて制作を続ける作家である。
少女とは不思議な存在である。普通、7歳前後~18歳前後の成年に達しない女子のことを指すが、自覚をもって少女になるわけでも、少女を卒業するわけでもない。気付けば少女だと認識され、いつの間にか女性として扱われるようになる。それは少年も同じくだが、声変わりのように大人に近づいたという印象を周りに与える要素が少ない分、いつからいつまでが「少女」なのか、より曖昧だ。
平林は、そんな少女の客体性・空虚さを表現したいと考えている。いわゆる大人の女性であるモデルを少女に近づけるための作用として、現実とは少し違う世界を描き出している。その空間を表現するための手がかりとして、生まれ育った諏訪の地にある神社や道祖神を取材、そこで目に留まった植物や石、木片なども作品に描き込んでいる。諏訪の原始信仰や縄文文化にも興味を持っており、自身の幼少期からの記憶や経験が作品に反映されている。
そもそも道祖神などに興味を抱いたきっかけは、東日本大震災だった。荒む町の辻に佇む石仏に花などが供えられているのを見て、物資も満足に手に入らないときでも人びとが祈りを捧げる姿、そしてそんな対象に成り得る石仏に感動した。その石仏が、そこでこれから先も土地の歴史を見守り続けるということを考えるとなおさらだ。
そのような存在を自分でも創り上げたいと制作を続ける。少女を描くのも、現実世界とは少し違う世界を描くのも、そういった心の拠りどころとなるものは少し曖昧な方が、自身の気持を投影できる余地があるからかもしれない。作家が生きる現代だけでなく、その土地の歴史、そしてそこから脈々と続いていく未来をも見据えて制作を続ける作家である。
丸山 綾 (諏訪市美術館)
To Depict Girls
There are many girls rendered in the art works of HIRABAYASHI Takahiro. A girl is a mysterious existence. It is an ambiguous question to determine from when she can be thought of as “a girl.” Seeking a world which is a little different from reality, with a desire to depict the objectivity and emptiness of the girls in his works, he visited the local shrines or travelers’ guardian deity statues in his hometown for his study. He renders everything which catches his eye during his visit, providing stimuli for his works.
The Great East Japan Earthquake triggered him to become interested in travelers’ guardian deity statues. He was so deeply impressed with the people in the devastated area, who still find solace in the stone images of Buddha in the same way they did before, that he decided to continue creating his works incorporating statues in existence. He is the kind of artist that keeps his eyes pinned on local history as well as time to come.
The Great East Japan Earthquake triggered him to become interested in travelers’ guardian deity statues. He was so deeply impressed with the people in the devastated area, who still find solace in the stone images of Buddha in the same way they did before, that he decided to continue creating his works incorporating statues in existence. He is the kind of artist that keeps his eyes pinned on local history as well as time to come.
Maruyama, Aya (Suwa City Museum of Art)