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OZ-尾頭-山口 佳祐に関する学芸員テキスト
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そこに潜む何かを探り、描く
OZこと山口佳祐は、いつでも、そしてどこでも描きたいものを的確に描き出す。祭りでの即興表現、神社や店舗での制作、浮世絵、広告デザイン…。現代の生活のなかで求められる絵画を、伝統的な描き方を重んじながら制作する、まさに現代の絵師である。
OZは幼少期、北斎や水木漫画に憧れ、絵を繰り返し写すことで身体に線や形を刷り込んでいった。10代で抽象表現に出会い「円」をひたすら描く。この頃から魔法使いなどにちなみ〝OZ〟を使いはじめた。20代でその場で得たイメージを自由自在に描き上げるライブパフォーマンスに没頭。地方を行脚し「その場で仕上げる」ことに自分を追い込んだ。その後、我孫子の芸術祭で円や三角形をモチーフに抽象作品を発表し、海外での滞在制作のチャンスを得る。そこで「私は一体何者か?」と立ち止まり、日本人の「おくゆかしさ」に彼は気付きはじめた。
2011年、長野市の神社の大絵馬制作が大きな転機となる。〝自由自在に描くこと〟が彼の表現であったのに対し、歴史や文化を〝よりわかりやすく伝える〟ことに目覚めたのだ。すると日常の行事や神事への意識が強く働き、自らの生まれや先祖への敬意が生まれたという。
彼は今「おくゆかしさ」をテーマに、懐から湧き上がる生や死、神事への興味などを大小さまざまな作品にして発表している。《擬音態画伝 そより》は擬音語や擬態語から連想した人物シリーズの一点である。不気味なほどに人物の佇まいが緻密に表されながら、人物には顔がない。顔を描かないことで、はっきりと形にならない人間の心模様を表象しているのだ。
彼は空間やその場に宿るものを察知しイメージを素早く画面に仕上げることを武器にしてきた。さらに絵に妥協しない真摯な制作姿勢と人間への興味とが重なり合って、あらゆる場面で表現の可能性に挑戦し続けている。「シンビズム」では安曇野に潜む何かをどう捉え、新たに表現してくれるかとても楽しみにしている。
OZは幼少期、北斎や水木漫画に憧れ、絵を繰り返し写すことで身体に線や形を刷り込んでいった。10代で抽象表現に出会い「円」をひたすら描く。この頃から魔法使いなどにちなみ〝OZ〟を使いはじめた。20代でその場で得たイメージを自由自在に描き上げるライブパフォーマンスに没頭。地方を行脚し「その場で仕上げる」ことに自分を追い込んだ。その後、我孫子の芸術祭で円や三角形をモチーフに抽象作品を発表し、海外での滞在制作のチャンスを得る。そこで「私は一体何者か?」と立ち止まり、日本人の「おくゆかしさ」に彼は気付きはじめた。
2011年、長野市の神社の大絵馬制作が大きな転機となる。〝自由自在に描くこと〟が彼の表現であったのに対し、歴史や文化を〝よりわかりやすく伝える〟ことに目覚めたのだ。すると日常の行事や神事への意識が強く働き、自らの生まれや先祖への敬意が生まれたという。
彼は今「おくゆかしさ」をテーマに、懐から湧き上がる生や死、神事への興味などを大小さまざまな作品にして発表している。《擬音態画伝 そより》は擬音語や擬態語から連想した人物シリーズの一点である。不気味なほどに人物の佇まいが緻密に表されながら、人物には顔がない。顔を描かないことで、はっきりと形にならない人間の心模様を表象しているのだ。
彼は空間やその場に宿るものを察知しイメージを素早く画面に仕上げることを武器にしてきた。さらに絵に妥協しない真摯な制作姿勢と人間への興味とが重なり合って、あらゆる場面で表現の可能性に挑戦し続けている。「シンビズム」では安曇野に潜む何かをどう捉え、新たに表現してくれるかとても楽しみにしている。
塩原 理絵子 (安曇野市豊科近代美術館)
To Sense Things Harbored in Places and Depict Them
YAMAGUCHI Keisuke, also known as OZ, paints precisely whatever he wants, including improvised works for festivals, commissioned works for shrines or stores, Japanese wood block prints “ukiyoe,” advertisement designs, and so on. OZ is a contemporary artist, or “eshi,” who paints works of art for use in daily life, while remaining true to the traditional way of painting. OZ’s talent lies in his ability to absorb the unique atmosphere of a particular vicinity and reflect his images of it quickly in his paintings. Moreover, he attaches importance to abstract expressions and depicting historical events on large votive wooden tablets called “ema.” At this exhibition of Shinbism, he will entice us with his current interests in self-expression based on “life and death” and animism.
Shiohara, Rieko (Azumino Municipal Museum of Modern Arts, Toyoshina)