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高木 こずえに関する学芸員テキスト
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写真というコト−写真のない写真家の展示
自分が撮った写真をもとに作品制作を行う。写真とはモノ(作品)ではなくコト(制作行為)―これが高木の姿勢である。
彼女は自身が反応したものを撮り、デジタルでコラージュし、そのうえで、「どうしてそうしたのか?」を執拗に考える。一般には感覚的行為として説明しにくいものをそれまでの作業よりはるかに長い時間をかけて内省する。作業はネガフィルム撮影→デジタル加工→印画紙での出力によって進められてきた。
しかし2012年にはじめた《琵琶島》は、デジタルカメラで撮影し、インクジェットで出力した。結果、1~2年でシリーズ展開する高木にとって《琵琶島》は異例の長期にわたる作品群となり、現在も終わってはいない。なぜ終われないのか、その理由をも求めて制作工程の再構築を試みながら新作《プレリュード》に挑んでいる。
《琵琶島》は、ネガや暗室での現像といった「潜」(ものやイメージが隠されている場所)を経ることがなかった。そこで《プレリュード》では、「実」(目に見え、手に触れられるもののある場所)と、「虚」(デジタルデータのように実体のない概念の場所)に、「潜」を加えた3つの場を行き来する工程を組んだ。具体的には、次のように油絵、木版画の制作を行う。
写真を撮る(ネガフィルムによるスナップショット)→スキャンする(フィルムのもつ情報をデジタルデータに変換する)→絵を描く(データになった写真イメージを油絵に描きおこす)→写真を撮る(描いた絵をデジタルカメラで撮影)→版木を彫る(PC上で絵柄を解体して再構成し版に彫る)→版画を刷る(終)
作家も写真は本来、直接コントロールできないものと認識し、そこに魅力を感じている。しかし、一方でこの再構築は、《琵琶島》で顕在化した衣装づくりや油絵制作といった手仕事でつくり出す「実」にも重きを置いている。素材は2015年2月から1年間、ポートランドでの日常を撮りためたスナップ写真。その表出の形は写真家による「油絵」と「木版画」という異色の形となる。
彼女は自身が反応したものを撮り、デジタルでコラージュし、そのうえで、「どうしてそうしたのか?」を執拗に考える。一般には感覚的行為として説明しにくいものをそれまでの作業よりはるかに長い時間をかけて内省する。作業はネガフィルム撮影→デジタル加工→印画紙での出力によって進められてきた。
しかし2012年にはじめた《琵琶島》は、デジタルカメラで撮影し、インクジェットで出力した。結果、1~2年でシリーズ展開する高木にとって《琵琶島》は異例の長期にわたる作品群となり、現在も終わってはいない。なぜ終われないのか、その理由をも求めて制作工程の再構築を試みながら新作《プレリュード》に挑んでいる。
《琵琶島》は、ネガや暗室での現像といった「潜」(ものやイメージが隠されている場所)を経ることがなかった。そこで《プレリュード》では、「実」(目に見え、手に触れられるもののある場所)と、「虚」(デジタルデータのように実体のない概念の場所)に、「潜」を加えた3つの場を行き来する工程を組んだ。具体的には、次のように油絵、木版画の制作を行う。
写真を撮る(ネガフィルムによるスナップショット)→スキャンする(フィルムのもつ情報をデジタルデータに変換する)→絵を描く(データになった写真イメージを油絵に描きおこす)→写真を撮る(描いた絵をデジタルカメラで撮影)→版木を彫る(PC上で絵柄を解体して再構成し版に彫る)→版画を刷る(終)
作家も写真は本来、直接コントロールできないものと認識し、そこに魅力を感じている。しかし、一方でこの再構築は、《琵琶島》で顕在化した衣装づくりや油絵制作といった手仕事でつくり出す「実」にも重きを置いている。素材は2015年2月から1年間、ポートランドでの日常を撮りためたスナップ写真。その表出の形は写真家による「油絵」と「木版画」という異色の形となる。
伊藤 羊子 ((一財)長野県文化振興事業団)
Photographs as Acts
An Exhibit by a Photographer without Photographs
TAKAGI creates her arts based on photographs taken by herself. For TAKAGI, photographs are not just objects, but acts to create art. This is her stance on photographs.
She shoots objects which interest her and makes digital collages out of the photos. Then, she spends considerable time asking herself why she did so.
In her new works, TAKAGI tries to reconstruct her creative process, going back and forth among three different places including “jitsu,” the tangible world, “kyo,” or notional entities like digital date, and “sen,” the spiritual world where objects and images are hidden. To create her original “handicrafts” from her photographs, she ventures on to painting and wood block printing.
TAKAGI creates her arts based on photographs taken by herself. For TAKAGI, photographs are not just objects, but acts to create art. This is her stance on photographs.
She shoots objects which interest her and makes digital collages out of the photos. Then, she spends considerable time asking herself why she did so.
In her new works, TAKAGI tries to reconstruct her creative process, going back and forth among three different places including “jitsu,” the tangible world, “kyo,” or notional entities like digital date, and “sen,” the spiritual world where objects and images are hidden. To create her original “handicrafts” from her photographs, she ventures on to painting and wood block printing.
Ito, Yoko (Nagano Prefectural Agency for Cultural Promotion)