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藤野 貴則に関する学芸員テキスト
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陶芸と現代アート
一見、ペットボトルのような作品やネジに見える作品群。しかし、これらは一輪挿しの陶芸作品である。質感も本物のペットボトルやネジのように表現されている。機能性と美術的な美しさを融合させた工芸でもありアートでもある作品であると思う。
作家自身、伝統工芸を主にしている。大分に生まれ、長野県には陶芸家・末岡信彦氏に師事するために移住してきた。日本伝統工芸展に出品を続け、20代で日本工芸会の正会員になる。普段は繊細な四季折々の花や動物などが描かれた色絵磁器作品を制作する。〝技〟や〝日本固有の美しさ〟を追求している作家と〝現代アート〟のような作品、ペットボトルなどの作品は意外な組み合わせである。伝統工芸の作家がペットボトルやネジをモチーフの作品を制作していると知ったとき、ひと通り伝統工芸を制作し終わり、新たな境地を見出すべくアート作品を制作しはじめたと勝手に推測した。しかしながら日本工芸会正会員になる前に、このような作品を制作しはじめたということも興味深い。
〝工芸から観たアート〟。作家はこのように表現している。「現代アート作品を制作しようとして創り出しているのではなく、工芸的主観で創り出している。身近にある物、常に身の廻りにあり気にも留めない物を焼き物という材質を借りて表現している。工芸はハッキリと、(皿、コップなど)使えるものであり、綺麗や汚いも分かりやすい」。
作家の言うように、陶芸作品はとくに用途があることが多く、そういう意味では〝わかりやすい〟作品であり、アートというよりは工芸作品の枠を出なかった。あえて、その陶芸作品に一輪挿しなどの用途を残しつつ、作家本人は意図していなくとも客観的に現代アートと思える作品となっている。そこに、この作家から陶芸も現代アート作品となりうる可能性を提示されているように思える。そして〝陶芸作品とは何か?〟という陶芸作品の本質を問う作品群であると考える。
作家自身、伝統工芸を主にしている。大分に生まれ、長野県には陶芸家・末岡信彦氏に師事するために移住してきた。日本伝統工芸展に出品を続け、20代で日本工芸会の正会員になる。普段は繊細な四季折々の花や動物などが描かれた色絵磁器作品を制作する。〝技〟や〝日本固有の美しさ〟を追求している作家と〝現代アート〟のような作品、ペットボトルなどの作品は意外な組み合わせである。伝統工芸の作家がペットボトルやネジをモチーフの作品を制作していると知ったとき、ひと通り伝統工芸を制作し終わり、新たな境地を見出すべくアート作品を制作しはじめたと勝手に推測した。しかしながら日本工芸会正会員になる前に、このような作品を制作しはじめたということも興味深い。
〝工芸から観たアート〟。作家はこのように表現している。「現代アート作品を制作しようとして創り出しているのではなく、工芸的主観で創り出している。身近にある物、常に身の廻りにあり気にも留めない物を焼き物という材質を借りて表現している。工芸はハッキリと、(皿、コップなど)使えるものであり、綺麗や汚いも分かりやすい」。
作家の言うように、陶芸作品はとくに用途があることが多く、そういう意味では〝わかりやすい〟作品であり、アートというよりは工芸作品の枠を出なかった。あえて、その陶芸作品に一輪挿しなどの用途を残しつつ、作家本人は意図していなくとも客観的に現代アートと思える作品となっている。そこに、この作家から陶芸も現代アート作品となりうる可能性を提示されているように思える。そして〝陶芸作品とは何か?〟という陶芸作品の本質を問う作品群であると考える。
梨本 有見 (須坂版画美術館)
Ceramics and Contemporary Art
The works by FUJINO Takanori on display at this exhibition look like colored PET bottles, at first sight. However, these are ceramic bottles created to be used as small flower vases. I think they are a kind of fusions of function in artistic beauty, belonging not only to crafts, but also art. The artist comments that his works are “artworks created from a craftsman’s point of view” – i.e. “artworks based on creating craftworks.” In other words, he creates contemporary art out of ceramic works, open to utilization in various ways, including small vases. It seems that this artist displays the possibility that ceramic works could become contemporary art. Moreover, his group of works on display look to me to be questioning “what really are ceramic works?” – the essence of ceramic works.
Nashimoto, Yuumi (SUZAKA HANGA MUSEUM)