ARTISTS
平林 孝央
油彩画
WORKS & COMMENT
作品&コメント
《湛》2018年
日本語テキストで読む
Read in English Text
【空虚の表面としての少女像】
いつの頃からだろうか、本当に手にしたい対象は、それが手に入らないことによってしか存続し得ない幻想だったのだと気づきはじめたのは。
もし手に入れてしまったら欲望自体が消失してしまう。それは悲しい。だから延々と描き続けなくてはならない。欲望を保ち/かつ増大させ続けるために。その対象を欲しいがままに手に入れられるのは対象を手に入れない限りにおいてである。
身近に佇む道祖神。それも神様を表現するただの石像なのではなく。その石像が神様を生み出す(幻想、意味を生成する)。
だけど気がかりがある。我々は神様がいないことを知っている。でも、当の神様は自分自身がいないことを知っているのだろうか?
だけど気がかりがある。我々は神様がいないことを知っている。でも、当の神様は自分自身がいないことを知っているのだろうか?
いつの頃からだろうか、本当に手にしたい対象は、それが手に入らないことによってしか存続し得ない幻想だったのだと気づきはじめたのは。
もし手に入れてしまったら欲望自体が消失してしまう。それは悲しい。だから延々と描き続けなくてはならない。欲望を保ち/かつ増大させ続けるために。その対象を欲しいがままに手に入れられるのは対象を手に入れない限りにおいてである。
身近に佇む道祖神。それも神様を表現するただの石像なのではなく。その石像が神様を生み出す(幻想、意味を生成する)。
だけど気がかりがある。我々は神様がいないことを知っている。でも、当の神様は自分自身がいないことを知っているのだろうか?
だけど気がかりがある。我々は神様がいないことを知っている。でも、当の神様は自分自身がいないことを知っているのだろうか?
A Statue of a Girl as a Surface of Emptiness
When did I begin to realize that an object which I really wish to acquire was an illusion that can exist only by the impossibility of gaining it?
Once we gain the object, our desire for it disappears. That’s depressing. That’s why I must continue painting endlessly, for the sake of desire itself, and allow it to grow. We gain the object only under the condition that we don’t entirely obtain it.
“Dososhin,” the traveler’s guardian deity, is standing near at hand. It’s not a simple stone statue which represents the figure of a god, but it creates a god, that is it generates the illusion and meaning of a god.
Now I have a concern that we know that such a god is nonexistent, but does the god himself know that he himself doesn’t exist?
Now I have a concern that we know that such a god is nonexistent, but does the god himself know that he himself doesn’t exist?
When did I begin to realize that an object which I really wish to acquire was an illusion that can exist only by the impossibility of gaining it?
Once we gain the object, our desire for it disappears. That’s depressing. That’s why I must continue painting endlessly, for the sake of desire itself, and allow it to grow. We gain the object only under the condition that we don’t entirely obtain it.
“Dososhin,” the traveler’s guardian deity, is standing near at hand. It’s not a simple stone statue which represents the figure of a god, but it creates a god, that is it generates the illusion and meaning of a god.
Now I have a concern that we know that such a god is nonexistent, but does the god himself know that he himself doesn’t exist?
Now I have a concern that we know that such a god is nonexistent, but does the god himself know that he himself doesn’t exist?
《チマタ》2016年
《湛》2017年
《岐》2016年
《後戸》2013年
《その少女は魔法少女に見えるかもしれない。でも騙されちゃいけない。その少女は本当に魔法少女なんだ。》2017年
《湛》2016年
《湛》2016年
NEWS
平林 孝央の関連情報
Profile
プロフィール
AWARD
おもな受賞歴
- 2007
- 第9回雪梁舎フィレンツェ賞展優秀賞
- 2008
- 独立展新人賞
RELEASE
おもな作品発表歴
- 2011
- 「神戸アートマルシェ」(神戸メリケンパークオリエンタルホテル/兵庫県)、「ULTRA004」(スパイラルガーデン/東京都、青山)
- 2012
- 個展「レスポワール展」(銀座スルガ台画廊/東京都)、「ART KYOTO」(国立京都国際会館アネックスホール/京都府)、「神戸アートマルシェ」(神戸メリケンパークオリエンタルホテル/兵庫県)、「ULTRA005」(スパイラルガーデン/東京都、青山)
- 2013
- 「アートフェア東京」(東京国際フォーラム/東京都)、個展「知らないことになっている主体」(Gallery Seek/東京都)
- 2014
- 「第5回風の会展」(雪梁舎美術館/新潟県)、「諏訪―この土地と人へのまなざし―」(諏訪市美術館/諏訪市)、個展「平林孝央展」(Gallery ARK/神奈川県)、個展「空虚な表面としての少女像について」(ぎゃるりじん/神奈川県)
- 2015
- 「Art Collector Starter Kit」(Corey Helford Gallery/アメリカ、ロサンゼルス)、個展「平林孝央個展」(Gallery Seek/東京都)、個展「岐の少女」(ぎゃるりじん/神奈川県)
- 2016
- 個展「The trace of Existences」(Corey Helford Gallery/アメリカ、ロサンゼルス)、個展「平林孝央油絵展―境界(囮)―」(東武百貨店/東京都)
- 2017
- 「Art Collector Starter Kit」(Corey Helford Gallery/アメリカ、ロサンゼルス)、「Beneath the New Waves」(Corey Helford Gallery/アメリカ、ロサンゼルス)
COMMENTARY
学芸員の解説
日本語テキストで読む
Read in English Text
少女を描く−平林孝央
平林孝央の作品には、その多くに少女が描かれている。少女たちは、小人のようなサイズで大輪の花のうえに寝そべり、巨人の大きさで森を見おろす。日常生活では目にすることのない豪奢なドレスを身にまとう姿は、どこか非現実的だ。
少女とは不思議な存在である。普通、7歳前後~18歳前後の成年に達しない女子のことを指すが、自覚をもって少女になるわけでも、少女を卒業するわけでもない。気付けば少女だと認識され、いつの間にか女性として扱われるようになる。それは少年も同じくだが、声変わりのように大人に近づいたという印象を周りに与える要素が少ない分、いつからいつまでが「少女」なのか、より曖昧だ。
平林は、そんな少女の客体性・空虚さを表現したいと考えている。いわゆる大人の女性であるモデルを少女に近づけるための作用として、現実とは少し違う世界を描き出している。その空間を表現するための手がかりとして、生まれ育った諏訪の地にある神社や道祖神を取材、そこで目に留まった植物や石、木片なども作品に描き込んでいる。諏訪の原始信仰や縄文文化にも興味を持っており、自身の幼少期からの記憶や経験が作品に反映されている。
そもそも道祖神などに興味を抱いたきっかけは、東日本大震災だった。荒む町の辻に佇む石仏に花などが供えられているのを見て、物資も満足に手に入らないときでも人びとが祈りを捧げる姿、そしてそんな対象に成り得る石仏に感動した。その石仏が、そこでこれから先も土地の歴史を見守り続けるということを考えるとなおさらだ。
そのような存在を自分でも創り上げたいと制作を続ける。少女を描くのも、現実世界とは少し違う世界を描くのも、そういった心の拠りどころとなるものは少し曖昧な方が、自身の気持を投影できる余地があるからかもしれない。作家が生きる現代だけでなく、その土地の歴史、そしてそこから脈々と続いていく未来をも見据えて制作を続ける作家である。
少女とは不思議な存在である。普通、7歳前後~18歳前後の成年に達しない女子のことを指すが、自覚をもって少女になるわけでも、少女を卒業するわけでもない。気付けば少女だと認識され、いつの間にか女性として扱われるようになる。それは少年も同じくだが、声変わりのように大人に近づいたという印象を周りに与える要素が少ない分、いつからいつまでが「少女」なのか、より曖昧だ。
平林は、そんな少女の客体性・空虚さを表現したいと考えている。いわゆる大人の女性であるモデルを少女に近づけるための作用として、現実とは少し違う世界を描き出している。その空間を表現するための手がかりとして、生まれ育った諏訪の地にある神社や道祖神を取材、そこで目に留まった植物や石、木片なども作品に描き込んでいる。諏訪の原始信仰や縄文文化にも興味を持っており、自身の幼少期からの記憶や経験が作品に反映されている。
そもそも道祖神などに興味を抱いたきっかけは、東日本大震災だった。荒む町の辻に佇む石仏に花などが供えられているのを見て、物資も満足に手に入らないときでも人びとが祈りを捧げる姿、そしてそんな対象に成り得る石仏に感動した。その石仏が、そこでこれから先も土地の歴史を見守り続けるということを考えるとなおさらだ。
そのような存在を自分でも創り上げたいと制作を続ける。少女を描くのも、現実世界とは少し違う世界を描くのも、そういった心の拠りどころとなるものは少し曖昧な方が、自身の気持を投影できる余地があるからかもしれない。作家が生きる現代だけでなく、その土地の歴史、そしてそこから脈々と続いていく未来をも見据えて制作を続ける作家である。
丸山 綾 (諏訪市美術館)
To Depict Girls
There are many girls rendered in the art works of HIRABAYASHI Takahiro. A girl is a mysterious existence. It is an ambiguous question to determine from when she can be thought of as “a girl.” Seeking a world which is a little different from reality, with a desire to depict the objectivity and emptiness of the girls in his works, he visited the local shrines or travelers’ guardian deity statues in his hometown for his study. He renders everything which catches his eye during his visit, providing stimuli for his works.
The Great East Japan Earthquake triggered him to become interested in travelers’ guardian deity statues. He was so deeply impressed with the people in the devastated area, who still find solace in the stone images of Buddha in the same way they did before, that he decided to continue creating his works incorporating statues in existence. He is the kind of artist that keeps his eyes pinned on local history as well as time to come.
The Great East Japan Earthquake triggered him to become interested in travelers’ guardian deity statues. He was so deeply impressed with the people in the devastated area, who still find solace in the stone images of Buddha in the same way they did before, that he decided to continue creating his works incorporating statues in existence. He is the kind of artist that keeps his eyes pinned on local history as well as time to come.
Maruyama, Aya (Suwa City Museum of Art)
EXHIBITION MUSEUM
開催会場の情報
辰野美術館
南信エリア
- 住所
- 〒399-0425
長野県上伊那郡辰野町樋口2407-1
- 電話番号
- 0266-43-0753
- 開館時間
- 9:00~17:00
- 閉館日
- 月曜(祝日除く)・祝日の翌日、冬期休
「シンビズム2 -信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち-」会期中は開館時間、閉館日が通常と異なっております