ARTISTS
山上 晃葉
ソフト・スカルプチュア、ペインティング
WORKS & COMMENT
作品&コメント
《fission》2011年
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幼少期から「身体」に興味を持ちはじめ、その興味は身体の外観や形から内部の臓器に移り、現在は遺伝子や目に見えない細胞に向けられている。それはまさに人間の身体に残された痕跡をみつける長い旅のようなものだ。どんなに人種が違っていようと持ちうる身体は変わらず、その肉体に刻まれた記憶は時として原始の人間の営みすら想起させるほど雄弁である。
最も近く、最も遠いこの存在を手掛かりに、目に見えないつながりを第二の皮膚である「布」を使い表現しようと遠くアメリカで制作を続けている。
生まれ育った国を離れて見えてくる自分のルーツやアイデンティティーは、原始の身体に思いを馳せることで見えてくるそれとなんとも似ている。自分が自分たらしめているものはなんなのか、私は作品を通してそんなものを探しているのかもしれない。
最も近く、最も遠いこの存在を手掛かりに、目に見えないつながりを第二の皮膚である「布」を使い表現しようと遠くアメリカで制作を続けている。
生まれ育った国を離れて見えてくる自分のルーツやアイデンティティーは、原始の身体に思いを馳せることで見えてくるそれとなんとも似ている。自分が自分たらしめているものはなんなのか、私は作品を通してそんなものを探しているのかもしれない。
My interest in the forms and shapes of the human body began in my childhood. Since then, as I have aged, my interest has moved from its outward, superficial appearance to the internal organs and functions of the body. Currently, my work has been focused even further inward on the invisible workings of our genes and cells. My process is a deep journey to find the memories and ideas stored in every part of the human body. Even if we come from different races and cultures, our bodies share the same forms and functions, and the intrinsic memories in our body are sometimes so eloquent that they evoke even the lives of primitive peoples in ancient times. Presently, I am far from my ancestral home of Japan and living in New York City where, through my art I am trying to depict the hidden stories of humanity and human biology utilizing fabrics, our metaphorical second skin.
My story and identity, which I began to understand more in a land far from my country, share meaning and similarities with stories and memories tangled in the bodies of ancient human beings. What makes me who I am? - I’m looking for the answer through my works.
My story and identity, which I began to understand more in a land far from my country, share meaning and similarities with stories and memories tangled in the bodies of ancient human beings. What makes me who I am? - I’m looking for the answer through my works.
《fission》(パフォーマンス:アキバタマビ3331 Arts Chiyoda 東京) 2011年
《Trinitas》(パフォーマンス:ALDEN Theatre ワシントンD.C.)2013年
《Cycle – S (B面)》2016年
《Musuhi》2018年
Profile
プロフィール
山上 晃葉YAMAKAMI Akiha
ソフト・スカルプチュア、ペインティング
- 1984
- 長野県長野市生まれ
- 1998
- 家族で上京
- 2007
- 多摩美術大学美術学部版画科卒業
- 2009
- 多摩美術大学大学院美術研究科版画リトグラフ専攻修了
- 2012
- 渡米
- 2017
- アメリカ合衆国永住権を取得、本格的に制作拠点をニューヨークに移す
【収蔵】
2007
町田市立国際版画美術館(東京都)
2008
佐久市立近代美術館(長野県)
2016
Williamsburg Art Historical Center(アメリカ)
2007
町田市立国際版画美術館(東京都)
2008
佐久市立近代美術館(長野県)
2016
Williamsburg Art Historical Center(アメリカ)
AWARD
おもな受賞歴
- 2007
- 町田市立国際版画美術館 買い上げ賞
RELEASE
おもな作品発表歴
- 2004
- 個展「あきはひとり展」(Gallery & Bar nagun/東京都、新宿・花園ゴールデン街)
- 2005
- 2人展「stir/still」(Substation Gallery/シンガポール)
- 2008
- 「第2回大学版画展受賞者展」(文房堂ギャラリー/東京都)
グループ展「わたしはあなたが理解できない展-−そこから始まるコミュニケーション−」(相模原市民ギャラリー/神奈川県)
多摩美術大学(日本)・弘益大学(韓国)・シルパコーン大学(タイ)グループ展「Collaborative Print Exhibition 2008 in ASIA」(銀座東和ギャラリー/東京都)
- 2012
- 「松代現代美術フェスティバル」(池田満寿夫美術館/長野市)
- 2013
- 「Collective Futures NYC」(G TECTS/アメリカ、ニューヨーク)
「Trinitas」(ALDEN Theatre/アメリカ、ワシントンD.C)
- 2016
- 「JART 6th」「JART 7th」(Williamsburg Art Historical Center/アメリカ、ニューヨーク)
COMMENTARY
学芸員の解説
日本語テキストで読む
Read in English Text
多様な価値と言いつつ
単一性の心地よさから逃れられない世界に咲く花
美術館で彼女の作品を展示していたとき、しばしば「これは本当に版画ですか?」と問われた。多摩美の版画科に受かったから、というシンプルな理由ではじまった道程。支持体が紙では自由に変形できないことに窮屈さを感じ、まずTシャツに刷ることからはじまり、伸縮性素材との出会いが彼女を自由にした。あの素材の皮膚感覚が、テーマとする「人間の身体、サイクル」ともマッチしたのだろう。
われわれは皮膚に覆われていることによってかろうじてその形態を保っているが、あんな薄くて脆いものとそこに付帯する感覚器官で、物理的な身体にとどまらず自分という存在そのものの境界を分けようとしているのだ。その境界の曖昧さは、危険でもあり心地よくもある。自分にとって正しいことがほかの誰にとっても正しくあるべきだという視界の狭さにもなり、他人の家の玄関先に黙って勝手に野菜を置いていくような田舎で代表的な行動にもなる。こちらの心ひとつでその解釈も変わり、自分自身が変容していく可能性をどこまで残せるか、という勝負どころにもなってくるのだろう。作品のなかで、果たして身体のどの部位なのかも定かでない「蠢く生命体的ななにか」がさまざまに結合しているのを見ると、社会的存在としては不安感を覚え、自然的存在としては安心感を覚えるのかもしれない。目に見えにくく、認識しにくいものを可視化することが美術の役割のひとつだとすれば、彼女の作品は、まことに明快にその期待に応えているといえよう。
作品を制作するうえで「自分の作った型にはまらない・人に見せたときに素通りされるものは作らない」ことを大切にしているという。心を常にフリーにし、自分自身の起こすハプニングも楽しみつつ、嫌味なく戦略的で挑戦的な姿勢を保つ。いよいよ本格的に世界に出たことで、彼女の作品が「さまざまな考え方が、本当の意味で許されるべきものである」ことを示してくれることを、心から期待している。
われわれは皮膚に覆われていることによってかろうじてその形態を保っているが、あんな薄くて脆いものとそこに付帯する感覚器官で、物理的な身体にとどまらず自分という存在そのものの境界を分けようとしているのだ。その境界の曖昧さは、危険でもあり心地よくもある。自分にとって正しいことがほかの誰にとっても正しくあるべきだという視界の狭さにもなり、他人の家の玄関先に黙って勝手に野菜を置いていくような田舎で代表的な行動にもなる。こちらの心ひとつでその解釈も変わり、自分自身が変容していく可能性をどこまで残せるか、という勝負どころにもなってくるのだろう。作品のなかで、果たして身体のどの部位なのかも定かでない「蠢く生命体的ななにか」がさまざまに結合しているのを見ると、社会的存在としては不安感を覚え、自然的存在としては安心感を覚えるのかもしれない。目に見えにくく、認識しにくいものを可視化することが美術の役割のひとつだとすれば、彼女の作品は、まことに明快にその期待に応えているといえよう。
作品を制作するうえで「自分の作った型にはまらない・人に見せたときに素通りされるものは作らない」ことを大切にしているという。心を常にフリーにし、自分自身の起こすハプニングも楽しみつつ、嫌味なく戦略的で挑戦的な姿勢を保つ。いよいよ本格的に世界に出たことで、彼女の作品が「さまざまな考え方が、本当の意味で許されるべきものである」ことを示してくれることを、心から期待している。
工藤 美幸 (佐久市)
A Flower Blooming in the World of Homogeneity, too comfortable for the artist to leave, with all her Assertion on the Importance of Having a Variety of Interpretation
YAMAKAMI Akiha changed the support of her works, from paper to elastic materials, because she felt inconvenienced while trying to change the shapes of her works freely. I think her decision turned out to be beneficial to her, as she was working on the theme, “the human body and its cycle,” because the new materials might suit her cutaneous sensation very well.
When creating her works, she says, she places importance on “not stereotyping herself by her own works,” and “never to allow viewers to simply pass by her works.” I heartily expect the works of YAMAKAMI Akiha, who moved her work base to the U.S., will reflect her comments that “a variety of ways of thinking should be allowed, in their true meaning.”
When creating her works, she says, she places importance on “not stereotyping herself by her own works,” and “never to allow viewers to simply pass by her works.” I heartily expect the works of YAMAKAMI Akiha, who moved her work base to the U.S., will reflect her comments that “a variety of ways of thinking should be allowed, in their true meaning.”
Kudo, Miyuki (Saku City)
EXHIBITION MUSEUM
開催会場の情報
須坂版画美術館
北信エリア
- 住所
- 〒382-0031
長野県須坂市大字野辺1386-8 (須坂アートパーク内)
- 電話番号
- 026-248-6633
- 開館時間
- 9:00~17:00
- 閉館日
- 水曜休(祝日除く)
「シンビズム2 -信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち-」会期中は開館時間、閉館日が通常と異なっております