Artist
参加アーティスト
小野寺 英克
Hidekatsu Onodera
>《水面に浮かび上がった動物》2007年
Works & Comment
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私は、豊満な量塊の胴体と空間のなかで緊張感に満ちた尾を合わせ持つネズミの形状に魅了され、その動物を主題として木彫による彫刻作品を制作してきた。木彫技法のひとつである内刳り(うちぐり)を自作に施すようになったことから、次第に内部の構造に興味を抱くようになった。そこであるとき、ネズミを解剖して体内を観察してみたが、筋や骨の造形と木の質感の相性が良くないように感じ、ネズミの体内器官に造形美を求めることを止めた。この一連の経験から、自作を解体・再構築させながらネズミの造形のなかに異なる量塊を求めることこそが、自身の作品制作の指標になるということに気付いた。
また、近年自作の造形が様式化している反省から、異素材である陶を採り入れて造形のアクセントとするなどし、今後の展開を摸索している。
また、近年自作の造形が様式化している反省から、異素材である陶を採り入れて造形のアクセントとするなどし、今後の展開を摸索している。
I was fascinated by rats which have plump, dense bodies and tails full of tension in the air. That is why I make woodcarvings with themes centered on this creature. As I started to apply hollowing, one of the wood carving techniques of my work, I became interested in rats’ internal structure. One day I dissected a rat to observe what’s inside of its body, but the shapes of its muscles and bones appear to be incompatible with the texture of wood, so I stopped pursuing the beauty of their internal organs. Through these experiences, I found that searching for the difference in mass in the shape of rats by disassembling and reassembling my work, would be my guide in the execution of my future works.
In addition, based on self-examination of my work that has stylized in recent years, I am adopting new techniques of using different materials such as ceramics and so on, to give accent to my woodcarvings. This is how I continue to find new ways to create my works.
In addition, based on self-examination of my work that has stylized in recent years, I am adopting new techniques of using different materials such as ceramics and so on, to give accent to my woodcarvings. This is how I continue to find new ways to create my works.
>《空に溶け込む動物》2009年
>《空に溶け込む動物2》2012年
>《空に溶け込む動物4》2017年
Profile
小野寺 英克 Hidekatsu Onodera
彫刻
- 1982
- 栃木県小山市生まれ
- 2005
- 信州大学教育学部美術教育分野卒業
- 2006
- 宇都宮大学研究生(〜2007)
ライフワークとして彫刻制作を開始
- 2009
- 上越教育大学大学院学校教育研究科「美術」修了
- 2010
- 長野県蘇南高等学校講師(〜2015)
- 2015
- 栃木県立益子芳星高等学校講師
主な受賞歴
- 2006
- 二紀展(第60回)奨励賞
第60回栃木県芸術祭芸術祭賞
- 2008
- 二紀展(第62回)優賞
- 2010
- 二紀展(第64回)損保ジャパン美術財団奨励賞
- 2012
- 第31回損保ジャパン美術財団選抜奨励展 新作優秀賞
主な作品発表歴
- 2006
- 第60回二紀展奨励賞
第60回栃木県芸術祭芸術祭賞
- 2008
- 第62回二紀展優賞
- 2010
- 第64回二紀展損保ジャパン美術財団奨励賞
- 2012
- 第31回損保ジャパン美術財団選抜奨励展新作優秀賞
学芸員の解説
日本語テキストで読む
Read in English Text
「空に溶け込む動物」
~独特なマッス、うずくまるネズミ~
~独特なマッス、うずくまるネズミ~
小野寺の作品は観るものを一瞬にして釘付けにするほどの強いインパクトを持つ。たとえどんな場所に置かれていても、悠々とその世界観を周囲に放つ存在感を持っている。
モチーフは一貫してネズミ(ラット)である。不気味で、ユーモラスでもあり古くから物語などに取り上げられてきた小動物を、巨大化させて迫力ある木彫に仕上げている。
小野寺は信州大学と上越教育大学大学院で学んだあと、2010年から5年間、木曽郡南木曽町で高校講師を務めた。ここで家族とともに暮らしながら地域になじみ、旧妻籠小学校をアトリエに使用した。筆者はこの頃に小野寺の存在を知り、《空に溶け込む動物》(2009)を観た。うずくまるネズミと延々とのびゆく尻尾の対比は緊張感あふれ、デフォルメされた姿に惹きこまれた。
今回、創作の秘密を探ろうと小野寺の過去の論文を読ませてもらった。論文によると大学時代、木彫制作の途中でみえない部分に施す内刳り(うちぐり)(軽量化と表面の割れ防止)がきっかけで内部構造探求に目覚めたらしい。人体構造の把握や手の所作など身体言語にも高い関心を持った。そこで小動物などのモチーフを貪欲に研究しながら、人体の一部を獣のなかに侵食させる試行を繰り返し、独特のマッス(量塊)を持つ現代彫刻を生み出すに至った。
《空に溶け込む動物2》(2012)も1匹のネズミが登場する。尻尾は円環となり先端をくわえながら空中に浮かぶようだ。前作より台座が高くなり重力から解放された軽やかさも加わり、自在な造形力でイメージを実在に置き換えることに成功している。筆者には、深い森林と高峰に囲まれた谷あいから広い空に憧れて、美しく赤く染まったネズミの化身にもみえる。本作で「第31回損保ジャパン美術財団選抜奨励展FINAL」新作優秀賞を受賞した。
本展は2007年からの作家の創作の軌跡と、2017年の新作までを木曽会場のレトロな空間で鑑賞できる初めての機会である。
モチーフは一貫してネズミ(ラット)である。不気味で、ユーモラスでもあり古くから物語などに取り上げられてきた小動物を、巨大化させて迫力ある木彫に仕上げている。
小野寺は信州大学と上越教育大学大学院で学んだあと、2010年から5年間、木曽郡南木曽町で高校講師を務めた。ここで家族とともに暮らしながら地域になじみ、旧妻籠小学校をアトリエに使用した。筆者はこの頃に小野寺の存在を知り、《空に溶け込む動物》(2009)を観た。うずくまるネズミと延々とのびゆく尻尾の対比は緊張感あふれ、デフォルメされた姿に惹きこまれた。
今回、創作の秘密を探ろうと小野寺の過去の論文を読ませてもらった。論文によると大学時代、木彫制作の途中でみえない部分に施す内刳り(うちぐり)(軽量化と表面の割れ防止)がきっかけで内部構造探求に目覚めたらしい。人体構造の把握や手の所作など身体言語にも高い関心を持った。そこで小動物などのモチーフを貪欲に研究しながら、人体の一部を獣のなかに侵食させる試行を繰り返し、独特のマッス(量塊)を持つ現代彫刻を生み出すに至った。
《空に溶け込む動物2》(2012)も1匹のネズミが登場する。尻尾は円環となり先端をくわえながら空中に浮かぶようだ。前作より台座が高くなり重力から解放された軽やかさも加わり、自在な造形力でイメージを実在に置き換えることに成功している。筆者には、深い森林と高峰に囲まれた谷あいから広い空に憧れて、美しく赤く染まったネズミの化身にもみえる。本作で「第31回損保ジャパン美術財団選抜奨励展FINAL」新作優秀賞を受賞した。
本展は2007年からの作家の創作の軌跡と、2017年の新作までを木曽会場のレトロな空間で鑑賞できる初めての機会である。
伊藤 幸穂(木曽町教育委員会)
An Animal Melting into the Sky - A Crouching Rat, with a Distorted Mass
The works of Onodera Hidekatsu rivet viewers’ attention in a matter of seconds. His motif is consistently a rat. Utilizing the enlarged motif of a single rat, a strangely humorous and small animal in real life, he executes his woodcarvings.
After earning his Master degree in art from Shinshu University and attending additional educational institutions, he continued to work on woodcarving while teaching at a high school located in Nagiso-machi and others as a lecturer from 2010 to 2015.
His work entitled “An Animal Melting into the Sky2” (2012) arouses the impression of a rat floating in the sky with its huge curling red tail. For this work, which is real in appearance and powerful in its presence, he was awarded the Excellent Work Award at the “31st Sompo Japan Award Exhibition.” This is the first display of an exhibition that gives the viewers an opportunity to see a series of works by the award-winner since 2007.
After earning his Master degree in art from Shinshu University and attending additional educational institutions, he continued to work on woodcarving while teaching at a high school located in Nagiso-machi and others as a lecturer from 2010 to 2015.
His work entitled “An Animal Melting into the Sky2” (2012) arouses the impression of a rat floating in the sky with its huge curling red tail. For this work, which is real in appearance and powerful in its presence, he was awarded the Excellent Work Award at the “31st Sompo Japan Award Exhibition.” This is the first display of an exhibition that gives the viewers an opportunity to see a series of works by the award-winner since 2007.
Ito Sachiho(Kiso-machi Board of Education)
開催会場
中信
御料館
- 住所
- 〒397-0001
長野県木曽郡 木曽町福島5471-1
- 電話番号
- 0264-23-2033
- 開館時間
- 10:00~17:00
- 閉館日
- 月曜と祝日の翌日休
「シンビズム -信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち-」会期中は開館時間、閉館日が通常と異なっております