Artist
参加アーティスト
矢島 史織
Shiori Yajima
>《Monster #10》2016年
Works & Comment
日本語テキストで読む
Read in English Text
私は夏の木漏れ日が好きだった。
森の中で、コントラストの強い木漏れ日のトンネルに出会うとワクワクした。刻々と姿を変えるその現象は生命の躍動感に溢れ、鮮烈な太陽の陽射しがつくりだす世界は私の作品に「光と影」をもたらした。
それから私は、太陽の形を追い求めるようになった。
しかしながら、ある年の春、木漏れ日との決別を決めた。
なぜなら、ビジュアルだけでなく根本から作品を変えたい、という強い思いがあったからだ。
それから4年。グラスを通した「光と影」はやがて心の中に宿り、光が強ければ強いほど影の色が深いことに気がついた。
今でも木漏れ日の光の輪は私を引きつけて離さない。
トンネルの先には一体何があるのだろうか。
まだ答えは見つかっていない。
森の中で、コントラストの強い木漏れ日のトンネルに出会うとワクワクした。刻々と姿を変えるその現象は生命の躍動感に溢れ、鮮烈な太陽の陽射しがつくりだす世界は私の作品に「光と影」をもたらした。
それから私は、太陽の形を追い求めるようになった。
しかしながら、ある年の春、木漏れ日との決別を決めた。
なぜなら、ビジュアルだけでなく根本から作品を変えたい、という強い思いがあったからだ。
それから4年。グラスを通した「光と影」はやがて心の中に宿り、光が強ければ強いほど影の色が深いことに気がついた。
今でも木漏れ日の光の輪は私を引きつけて離さない。
トンネルの先には一体何があるのだろうか。
まだ答えは見つかっていない。
At times, I very much liked to see the rays of sunshine filtering through the branches of trees in summer.
In the woods, I was enthralled to encounter the tunnels shaped by these rays of sunshine creating a striking contrast. The phenomenon by the sunlight, transforming every second, seemed vibrant with life, and the world created by the vivid sunshine brought “light and shadow” to my works.
Since then, I have been searching for the effects of the sun.
But, on a spring day, I decided to distance myself from these rays of sunshine.
Because I felt a strong desire to change my works, not only visually, but also essentially from its very foundation.
Four years have passed since then. "Light and shadow" through glass have gradually entered my heart instead, and I took notice of a phenomenon where the brighter the light gets, the darker the shadows become.
The circles formed by the rays of sunshine through the branches of trees still captivate me.
What’s on the other end of these tunnels?
I have yet to find the answer.
In the woods, I was enthralled to encounter the tunnels shaped by these rays of sunshine creating a striking contrast. The phenomenon by the sunlight, transforming every second, seemed vibrant with life, and the world created by the vivid sunshine brought “light and shadow” to my works.
Since then, I have been searching for the effects of the sun.
But, on a spring day, I decided to distance myself from these rays of sunshine.
Because I felt a strong desire to change my works, not only visually, but also essentially from its very foundation.
Four years have passed since then. "Light and shadow" through glass have gradually entered my heart instead, and I took notice of a phenomenon where the brighter the light gets, the darker the shadows become.
The circles formed by the rays of sunshine through the branches of trees still captivate me.
What’s on the other end of these tunnels?
I have yet to find the answer.
>《Forest》2012年
>《One day》2010年
>《Monster #13》2017年
Profile
矢島 史織 Shiori Yajima
日本画
- 1979
- 長野県茅野市生まれ
- 2005
- 多摩美術大学大学院美術研究科日本画領域修了
主な受賞歴
- 2014
- The 9th 100 ARTISTS EXHIBITION 1st Prize
- 2015
- 清須市第8回はるひ絵画トリエンナーレ準大賞・美術館賞
シェル美術賞2015準グランプリ
- 2016
- 第5回あさごアートコンペティション優秀賞
主な作品発表歴
- 2005
- 「矢島史織展」(ギャラリー渓/東京都)
- 2006
- 「羅針盤セレクション HOPE 2006 VOL.2 様々なニホン画」(アートスペース羅針盤/東京都)
「ウチダヨシエ/矢島史織展」(ギャラリー渓/東京都)
- 2007
- 個展「Emotional Landscape」(柴田悦子画廊/東京都)
個展「ひかりをつなぐ」(銀座スルガ台画廊/東京都)
- 2008
- 個展「光の増殖」(桜華書林/長野市)
- 2009
- 「矢島史織展」(柴田悦子画廊/東京都)
- 2010
- 個展「あふれる光・ゆらめく影」(ギャラリー82/長野市)
現代アートシーンIV「感覚の向こうへ」(小海町高原美術館/小海町)
- 2011
- 「第1回メタモルフォーシス展」(ギャラリー82/長野市)
以降第2回(2014年)と第3回(2017年)にも出品
- 2013
- 個展「MIND SCOPE」(LIXILギャラリー/東京都)
- 2014
- 信濃美術をみつめる#4 矢島史織(茅野市美術館/茅野市)
個展「Beyond the Forest」(OUCHI GALLERY/USA、N.Y.)
- 2015
- 「開館2周年記念特別企画展 新世代アーティスト展 矢島史織」(市立岡谷美術考古館/岡谷市)
清須市はるひ絵画トリエンナーレアーティストシリーズ「Vol.79 矢島史織展 ひかりのなかの永遠」(清須市はるひ美術館/愛知県)
- 2016
- 個展「Little Little Little ...」(桜華書林/長野市)
- 2017
- 矢島史織・石井奏子展(アートスペース羅針盤/東京都)
学芸員の解説
日本語テキストで読む
Read in English Text
光を求めて−日本画家・矢島史織
矢島史織の作品は、そのなかにあらわれる光とともに、静かに潜む影が印象的だ。
1979年、長野県茅野市に生まれた矢島は、日本画の顔料そのものの魅力と、日本美術に興味を持ち日本画を志した。多摩美術大学の大学院生のとき、八ヶ岳の森で木漏れ日のピンホール現象にふれた。太陽の光が、葉と葉の隙間を通ることで生まれる、楕円形にゆれる光の輪。その風景に心の奥底から感動し、その脳裏に鮮烈な印象を残したという。
ゆらめく光と影。自然や生活のなかにある木漏れ日を数年に渡り追い続け、「木漏れ日」シリーズが生まれる。やがてより心象に迫った「光と影」を描きたいという気持ちから「グラス」シリーズが生まれた。「誰もが持ち合わせている内面的な影を、身近なグラスの水の中に潜ませたい」と語り、自身の心の「光と影」をも追い求める。
目にみえる「光と影」、目にみえない「光と影」。モチーフを変えてその両方を約10年に渡って描き続けた矢島は、2015年に新しいシリーズ「Monster」を発表する。
自身の子の姿を主題とし、瞬く間に成長する子と、その脳の発達、そういった変化を身近に感じながら、花や棘、貝、ソフトクリームなどとの組み合わせを試みながら表現する。たとえば、本展に出品する《Monster #10》では、茅野市内の散策のなかでみつけた直径4cmほどのルリダマアザミを脳に重ねて、爆発的なエネルギーで変化していく様子が描かれている。子の目をつぶる静かな表情、そしてその表情からは想像できないような脳の発達。花のなかの小宇宙。そこにはさまざまな「光と影」をみることができる。
矢島の原風景には、幼少期、父と過ごした八ヶ岳の山々で感じた木々の呼応、生命の輝きがあるという。その輝き=光の裏には、山という場所があわせ持つ、危険な影も潜んでいる。矢島は自身の理想を「自然の光に匹敵する光をみつけて描きたい」と語る。今後も、自然と人の心をみつめながら、新たな光、そして影をわれわれにみせてくれるだろう。
1979年、長野県茅野市に生まれた矢島は、日本画の顔料そのものの魅力と、日本美術に興味を持ち日本画を志した。多摩美術大学の大学院生のとき、八ヶ岳の森で木漏れ日のピンホール現象にふれた。太陽の光が、葉と葉の隙間を通ることで生まれる、楕円形にゆれる光の輪。その風景に心の奥底から感動し、その脳裏に鮮烈な印象を残したという。
ゆらめく光と影。自然や生活のなかにある木漏れ日を数年に渡り追い続け、「木漏れ日」シリーズが生まれる。やがてより心象に迫った「光と影」を描きたいという気持ちから「グラス」シリーズが生まれた。「誰もが持ち合わせている内面的な影を、身近なグラスの水の中に潜ませたい」と語り、自身の心の「光と影」をも追い求める。
目にみえる「光と影」、目にみえない「光と影」。モチーフを変えてその両方を約10年に渡って描き続けた矢島は、2015年に新しいシリーズ「Monster」を発表する。
自身の子の姿を主題とし、瞬く間に成長する子と、その脳の発達、そういった変化を身近に感じながら、花や棘、貝、ソフトクリームなどとの組み合わせを試みながら表現する。たとえば、本展に出品する《Monster #10》では、茅野市内の散策のなかでみつけた直径4cmほどのルリダマアザミを脳に重ねて、爆発的なエネルギーで変化していく様子が描かれている。子の目をつぶる静かな表情、そしてその表情からは想像できないような脳の発達。花のなかの小宇宙。そこにはさまざまな「光と影」をみることができる。
矢島の原風景には、幼少期、父と過ごした八ヶ岳の山々で感じた木々の呼応、生命の輝きがあるという。その輝き=光の裏には、山という場所があわせ持つ、危険な影も潜んでいる。矢島は自身の理想を「自然の光に匹敵する光をみつけて描きたい」と語る。今後も、自然と人の心をみつめながら、新たな光、そして影をわれわれにみせてくれるだろう。
前田 忠史(茅野市美術館)
In Search of Light – A Japanese-style Painter, Yajima Shiori
Dominant luminous light and lurking modest shadows are prevalent in Yajima Shiori’s works. Being inspired by the play of sunlight filtered through the trees, which impressed her in the woods of Mt. Yatsugatake, she embarked in her search of “light and shadow.” After a while, she also discovered, within herself, another search for “light and shadow.” In her new series of works entitled “Monster,” she renders figures of her child, who grows in an instant and whose brain develops explosively, in combination with elements in nature such as flowers, thorns, spiraling shells and so on. She says that the glow of nature, which she experienced in the woods of Mt. Yatsugatake, brought to life her inner landscape. She also says that her goal is “to produce work which is evocative of her own inner light comparable to that found in nature.” She will surely continue to find and show us new shades of light and shadow in the future.
Maeda Tadafumi(Chino City Museum of Art)
開催会場
中信
御料館
- 住所
- 〒397-0001
長野県木曽郡 木曽町福島5471-1
- 電話番号
- 0264-23-2033
- 開館時間
- 10:00~17:00
- 閉館日
- 月曜と祝日の翌日休
「シンビズム -信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち-」会期中は開館時間、閉館日が通常と異なっております