Artist
参加アーティスト
角居 康宏
Yasuhiro Sumii

>《票》2017年
Works & Comment
日本語テキストで読む
Read in English Text
作るということ
人間とそのほかの生物を隔て、人間たらしめている最たるものは「意識」というものであろう。
「意識」を獲得することにより人間は死を予測し、自分自身を失うという恐怖を乗り越えるために祈り、祈りは多様化しながらそれを具現化するためにものを作った。
作るという行為がどんなに高度化しミクロの世界に入り込もうとも原点はそこにある。
有史以来、人はしあわせを祈り、豊穣を願い、ものを作り続けている。
そして今その端くれに自分が立っている。
そのことを自覚しながら作るという行為を続けることで、人間そのものの本質にふれることができるのだと信じている。
人間とそのほかの生物を隔て、人間たらしめている最たるものは「意識」というものであろう。
「意識」を獲得することにより人間は死を予測し、自分自身を失うという恐怖を乗り越えるために祈り、祈りは多様化しながらそれを具現化するためにものを作った。
作るという行為がどんなに高度化しミクロの世界に入り込もうとも原点はそこにある。
有史以来、人はしあわせを祈り、豊穣を願い、ものを作り続けている。
そして今その端くれに自分が立っている。
そのことを自覚しながら作るという行為を続けることで、人間そのものの本質にふれることができるのだと信じている。
Creating
I imagine “consciousness” separates us human beings from other living organisms more than anything else.
By having “consciousness,” human beings expect death, and, by praying, we try to overcome the fear of losing our bodies. Our prayers become diversified and, to materialize those prayers, we create.
How sophisticatedly we produce, how microscopically we manufacture, it all starts there!
Ever since history began, we have prayed for happiness and fertility, and have continued to create.
Now, I take a small part in creating.
If I continue to work with such ever-present consciousness, I believe, I will be able to touch the true nature of who we are.
I imagine “consciousness” separates us human beings from other living organisms more than anything else.
By having “consciousness,” human beings expect death, and, by praying, we try to overcome the fear of losing our bodies. Our prayers become diversified and, to materialize those prayers, we create.
How sophisticatedly we produce, how microscopically we manufacture, it all starts there!
Ever since history began, we have prayed for happiness and fertility, and have continued to create.
Now, I take a small part in creating.
If I continue to work with such ever-present consciousness, I believe, I will be able to touch the true nature of who we are.

>《票(部分)》2017年

>《たま》2017年

>《染色体》2002年

>《染色体(部分)》2002年

>《はじまりのかたち》2007年

Profile
角居 康宏 Yasuhiro Sumii
金属造形
- 1968
- 石川県金沢市生まれ
- 1993
- 金沢美術工芸大学美術工芸学部産業美術学科工芸デザイン専攻卒業
卒業後、陶芸家の鯉江良二の工房で学ぶ
長野県に移住し、原始古代からの自然に対する人間の営みをテーマにした《原初》(1998)、《呪術》(2003)、《依代》(2006)、《秘密》(2008)、《神話の風景》(2013)、《層》(2016)、《野辺》(2017)シリーズを制作している
主な受賞歴
- 2009
- 佐野ルネッサンス鋳金展優秀賞
主な作品発表歴
- 1995
- 「天理ビエンナーレ」(奈良県)
- 1997
- 「洞爺湖国際彫刻ビエンナーレ」(北海道)
- 2005
- 「中国国際画廊展覧会」(中国、北京)
「KOREA INTERNATIONAL ART FAIR」(韓国、ソウル)
- 2007
- 個展「はじまりのかたち」(八十二文化財団/長野市)
「第6回まつしろ現代美術フェスティバル」(長野市)
- 2008
- 個展「はじまりのかたち」(金沢市民芸術村/石川県)
- 2009
- 「佐野ルネッサンス鋳金展」(栃木県)
- 2015
- 「はじまりのかたち 角居康宏金属造形作品展」
(山ノ内町立志賀高原ロマン美術館/山ノ内町)
- 2016
- 「はじまりのかたち 角居康宏金属造形作品展」
(関口美術館/東京都)
- 2017
- 角居康宏鋳金展「はじまりのかたち」
(信州高遠美術館/伊那市)
角居 康宏からのお知らせ
2018/02/02
長野の限界集落をアーティストの秘密基地へ。 中条アートロケーション《場》設置プロジェクト
学芸員の解説
日本語テキストで読む
Read in English Text
角居康宏の芸術
角居康宏は現代美術のジャンルでくくられる作家だが、その造形思考は古典を飛び越してはるかに古い原始の感覚をともなっている。
早い時期に陶芸家の鯉江良二の影響を受けたことが、この作家の芸術性の方向を定めたように思われる。陶芸は成形の段階こそ作家の意図がおよぶが、窯に入れてからは火の力に頼る。完成形が予測できない。作品は作家の統制を離れて自然の力を借りることになる。角居康宏の制作はこれとよく似ている。
人間が美術という概念を確立するずっと以前に、人間の心や意識の根底にあった「美しい」という感覚は、人間にはどうにもできない自然の力や運命に対する畏怖や感謝、喜びや悲しみの感情と不可分に結び付いているように思われる。いや、そうした人間の理解を超えた絶対的な力に対する人間の感情がまず先にあり、それが昇華されて美しいという感覚に達したのだろう。
西洋はルネサンス以降、人間と自然を対立した関係としてとらえ、人間の尺度で自然を解釈していくという人間中心の世界観にもとづいて発展してきており、美術もその例外ではない。翻って東洋では、人間と自然は対立した関係ではなく、自然の一部にすぎないと考えた。人間が自然のなかに入り込み一体となって振るまう世界観は、山水画など古くからの東洋絵画にみられる。
角居康宏の芸術の座標とは、こうした両洋の自然への解釈に至るよりずっと前の、人間の自然に対する驚きや畏敬の念に裏打ちされた無垢な意識のうえに立つ。人間が太古の昔に感じ、そして進歩することで忘れていったこの感覚を芸術としてのかたちに完結させたことにある。
角居康宏の作品は、われわれの記憶を美術が美術と認識される以前の始原的な感覚にまで遡らせることにより衝撃的であり、われわれに与える印象は強烈なのである。
いつから私たちは謙虚な気持ちを失ったのだろう。畏れるべき大いなる存在をなくしたのだろう。角居康宏の作品に囲まれると、私はいつもそんな思いにかられる。
早い時期に陶芸家の鯉江良二の影響を受けたことが、この作家の芸術性の方向を定めたように思われる。陶芸は成形の段階こそ作家の意図がおよぶが、窯に入れてからは火の力に頼る。完成形が予測できない。作品は作家の統制を離れて自然の力を借りることになる。角居康宏の制作はこれとよく似ている。
人間が美術という概念を確立するずっと以前に、人間の心や意識の根底にあった「美しい」という感覚は、人間にはどうにもできない自然の力や運命に対する畏怖や感謝、喜びや悲しみの感情と不可分に結び付いているように思われる。いや、そうした人間の理解を超えた絶対的な力に対する人間の感情がまず先にあり、それが昇華されて美しいという感覚に達したのだろう。
西洋はルネサンス以降、人間と自然を対立した関係としてとらえ、人間の尺度で自然を解釈していくという人間中心の世界観にもとづいて発展してきており、美術もその例外ではない。翻って東洋では、人間と自然は対立した関係ではなく、自然の一部にすぎないと考えた。人間が自然のなかに入り込み一体となって振るまう世界観は、山水画など古くからの東洋絵画にみられる。
角居康宏の芸術の座標とは、こうした両洋の自然への解釈に至るよりずっと前の、人間の自然に対する驚きや畏敬の念に裏打ちされた無垢な意識のうえに立つ。人間が太古の昔に感じ、そして進歩することで忘れていったこの感覚を芸術としてのかたちに完結させたことにある。
角居康宏の作品は、われわれの記憶を美術が美術と認識される以前の始原的な感覚にまで遡らせることにより衝撃的であり、われわれに与える印象は強烈なのである。
いつから私たちは謙虚な気持ちを失ったのだろう。畏れるべき大いなる存在をなくしたのだろう。角居康宏の作品に囲まれると、私はいつもそんな思いにかられる。
大竹 永明(松本市教育委員会)
The Art of Sumii Yasuhiro
The sense of “beauty”, which has existed in the bottom of our mind or consciousness long before the days when mankind created the concept of art, is inseparably connected with such feelings as awe and gratitude, joy and sorrow of the irresistible force of nature or fate.
The art of Sumii Yasuhiro is based on innocent consciousness which naturally originates with our sense of wonder or awe of nature. He embodies in his works feelings which mankind once bore before, in ancient days, but became lost in our progress toward the future.
The work of Sumii Yasuhiro conveys shocking and strong impressions because it compels us to trace our memory back to primitive times long before the days when art was recognized as art.
The art of Sumii Yasuhiro is based on innocent consciousness which naturally originates with our sense of wonder or awe of nature. He embodies in his works feelings which mankind once bore before, in ancient days, but became lost in our progress toward the future.
The work of Sumii Yasuhiro conveys shocking and strong impressions because it compels us to trace our memory back to primitive times long before the days when art was recognized as art.
Otake Nagaaki(Matsumoto-shi Board of Education)
開催会場
中信
御料館
「シンビズム -信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち-」会期中は開館時間、閉館日が通常と異なっております