ARTISTS
橋口 優
油彩画、イラスト、羊毛フェルト作品
WORKS & COMMENT
作品&コメント
《fit in》2018年
日本語テキストで読む
Read in English Text
登校するにも下校するにも、
諏訪盆地では視界にいつでも山が入る。
(遠くて見えないけど、今、山の中を誰かが歩いているかも。)
(木々の下では森の動物がどんな暮らしをしているのか。)
そんなことを想像するのはとてもわくわくした。
それでも実際に登山をするようになったのは、つい5年ほど前のこと。
都会暮らしの結果、緑が恋しくなり、とうとう本当に見に行くことにしたのだ。
面白いことに、
家で制作をしている時は山に飛び出して行きたくなるし、
山を歩いている時は、一刻も早く家で制作をしたくなってしまう。
どちらも中途半端な気がして焦った時期は長かったが、
一方をしながらもう一方を思うことで、私の絵も登山スタイルも成り立つようだ。
諏訪盆地では視界にいつでも山が入る。
(遠くて見えないけど、今、山の中を誰かが歩いているかも。)
(木々の下では森の動物がどんな暮らしをしているのか。)
そんなことを想像するのはとてもわくわくした。
それでも実際に登山をするようになったのは、つい5年ほど前のこと。
都会暮らしの結果、緑が恋しくなり、とうとう本当に見に行くことにしたのだ。
面白いことに、
家で制作をしている時は山に飛び出して行きたくなるし、
山を歩いている時は、一刻も早く家で制作をしたくなってしまう。
どちらも中途半端な気がして焦った時期は長かったが、
一方をしながらもう一方を思うことで、私の絵も登山スタイルも成り立つようだ。
On my way to school or home,
Mountains are always in sight in Suwa Basin.
(Someone may be walking in a mountain now, although I cannot see them from a distance.)
(How do wild animals live under the trees in forests?)
It was intriguing to think like that.
I started mountain climbing only five years ago.
I got tires of living in the city and missed the verdant trees, so I finally went to see them.
The puzzling thing is, when I create at home, I feel irresistible impulse to jump out of my house and climb the mountains and, when I go walking on a mountain, I get the irresistible urge to return home as soon as possible to work.
For a long time, this contradiction bothered me because I thought I was drawn between two paths. But now I realized that doing one thing while turning my thought toward another could make both compatible.
Mountains are always in sight in Suwa Basin.
(Someone may be walking in a mountain now, although I cannot see them from a distance.)
(How do wild animals live under the trees in forests?)
It was intriguing to think like that.
I started mountain climbing only five years ago.
I got tires of living in the city and missed the verdant trees, so I finally went to see them.
The puzzling thing is, when I create at home, I feel irresistible impulse to jump out of my house and climb the mountains and, when I go walking on a mountain, I get the irresistible urge to return home as soon as possible to work.
For a long time, this contradiction bothered me because I thought I was drawn between two paths. But now I realized that doing one thing while turning my thought toward another could make both compatible.
《小鳥きれい》2015年
《山行きたいけど家にいる》2018年
《はじまりの合図 〜四賀小編〜》2017年
《われら》2013年
《雲の子突然踊り出す》2013年
《魚の子自由に歌う》2017年
NEWS
橋口 優の関連情報
2018
12/23
(日)
2018
12/16
(日)
Profile
プロフィール
橋口 優HASHIGUCHI Yuu
油彩画、イラスト、羊毛フェルト作品
- 1984
- 長野県茅野市生まれ、諏訪市育ち
- 2007
- 多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
- 2017
- イラストレーターとして活動開始
AWARD
おもな受賞歴
- 2007
- 多摩美術大学卒業制作優秀作品
- 2010
- NY公募展最終審査(The Art Complex Center of Tokyo主催)オーディエンス賞、優秀賞
- 2011
- 第11回三菱商事Art Gate Program採用
RELEASE
おもな作品発表歴
- 2007
- 「OTHER PAINTING」(Pepper’s Gallery/東京都、銀座)
- 2008
- 「OTHER PAINTINGⅡ」(Pepper’s Gallery)
「Emerging Artists’ Exhibition」(Secret Project Robot/アメリカ、ニューヨーク)
- 2009
- アートフェア「PULSE NY 2009」(アメリカ、ニューヨーク)
- 2010
- 「long long ago 楯とおる×橋口優」(EXCY GALLERY/アメリカ、ニューヨーク)
- 2011
- 個展「見えない見えるよ」(金魚カフェ/東京都、代々木)
- 2012
- 「画賊の自由研究」(unseal contemporary/東京都、日本橋)
個展「みえないみえるよ」(Gallery YOKO、鎌倉現代Art Project/神奈川県、鎌倉市)
- 2013
- 「胎内巡りと画賊たち〜新春 真っ暗闇の大物産 展〜」(京都美術工芸大学附属京都工芸美術館/京都府、京都市)、「1984のアトリエ」(茅野市民館市民ギャラリー/茅野市)
- 2014
- 芸術祭「アトリエ開放展」(中川村)
- 2015
- 「メイメイアート 生まれる名付ける歩きだす」(茅野市美術館/茅野市)
- 2016
- 「八ヶ岳クラフト市」(八ヶ岳自然文化園/原村)
- 2017
- 『旅するムサビ』がやってくる! in茅野」(茅野市美術館ほか/茅野市)
「四賀小学校+橋口優ー山と学校ー」(諏訪市美術館/諏訪市)
COMMENTARY
学芸員の解説
日本語テキストで読む
Read in English Text
人と山 −つながりの場としての絵画−
画家・橋口優は、八ヶ岳の麓である茅野市に生まれ、諏訪市で育った。彼女が通った小学校は山に面しており、山は遊び場であった。大学進学のため長野県を離れ、10年間東京で過ごしたが、近年故郷に戻り、この地で制作をおこなっている。
橋口は油彩画をおもに描いているが、その代表的シリーズは、小学校を主題である。体育館での全校集会、教室の風景、出し物の練習をする子どもたちの姿。小さな体の子どもたちは均質に描かれ、それぞれのアイデンティティが感じられないが、だからこそ、観る者はそのなかのひとりに自分を投影させて、子ども時代の記憶や感情をそこに見たりする。記憶のなかで繰り広げられる、静かな物語である。
一方で、最近作は山が主題である。記憶に重点が置かれる「学校」シリーズに対し、「山」シリーズは橋口の現在が反映され、動的な作品が多くなっている。橋口は、登山関連用品店で働きながら、自ら山に足を運び、制作に取り組む。描く対象は、山そのものというより、「山とそこに集うものたち」といった方が良さそうである。色とりどりの小鳥たちや、登山やカヌー、パラグライダーなどで楽しむ人びと。山で健やかに、のびのびと過ごす人と、橋口自身が得た自然の気配が表されている。
橋口は、「山」シリーズはより鑑賞者を意識して描くという。作品を、単に美しい山の風景画としてではなく、山を愛する人びととの共感の場として表すことを試みているのである。また、雑誌の挿絵や登山道具につけるフェルト作品を手がけることで、油彩画だけでは達し得ない人とのつながりを得ようとしている。
近代以前の西洋において、崇高の対象とされたアルプスの名峰は、アルプス鉄道の開通により人びとと身近な存在となり、次第に絵画の主題に加わったという。橋口も、山と身近にいるからこそ、山という主題に取り組むことが可能なのであり、熱心なのだろう。「山」シリーズは、彼女が体験し、そこで得た山の「あれこれ」がつまっている。ぜひ画面を前にして、山の「あれこれ」を体験したいと思う。
橋口は油彩画をおもに描いているが、その代表的シリーズは、小学校を主題である。体育館での全校集会、教室の風景、出し物の練習をする子どもたちの姿。小さな体の子どもたちは均質に描かれ、それぞれのアイデンティティが感じられないが、だからこそ、観る者はそのなかのひとりに自分を投影させて、子ども時代の記憶や感情をそこに見たりする。記憶のなかで繰り広げられる、静かな物語である。
一方で、最近作は山が主題である。記憶に重点が置かれる「学校」シリーズに対し、「山」シリーズは橋口の現在が反映され、動的な作品が多くなっている。橋口は、登山関連用品店で働きながら、自ら山に足を運び、制作に取り組む。描く対象は、山そのものというより、「山とそこに集うものたち」といった方が良さそうである。色とりどりの小鳥たちや、登山やカヌー、パラグライダーなどで楽しむ人びと。山で健やかに、のびのびと過ごす人と、橋口自身が得た自然の気配が表されている。
橋口は、「山」シリーズはより鑑賞者を意識して描くという。作品を、単に美しい山の風景画としてではなく、山を愛する人びととの共感の場として表すことを試みているのである。また、雑誌の挿絵や登山道具につけるフェルト作品を手がけることで、油彩画だけでは達し得ない人とのつながりを得ようとしている。
近代以前の西洋において、崇高の対象とされたアルプスの名峰は、アルプス鉄道の開通により人びとと身近な存在となり、次第に絵画の主題に加わったという。橋口も、山と身近にいるからこそ、山という主題に取り組むことが可能なのであり、熱心なのだろう。「山」シリーズは、彼女が体験し、そこで得た山の「あれこれ」がつまっている。ぜひ画面を前にして、山の「あれこれ」を体験したいと思う。
People and the Mountains
– Painting as a Place for Forming Relationships
The painter, HASHIGUCHI Yuu, deals with elementary schools in her “School Series,” which represents the majority of her works. However, in her recent works, she deals with mountains as her main theme. Her “Mountain Series” reflects her current life, and a growing number of her works tend to convey dynamism.
HASHIGUCHI, while working at a mountaineering store, takes herself to the mountains and creates her works. The objects in her paintings are “the mountains and people who gather there,” rather than the mountains themselves, and she depicts in her paintings not only the people spending their time healthily and relaxed in the mountains, but also the atmosphere in the variety of nature which she senses in the mountains. HASHIGUCHI says she is more conscious of her viewers when she creates pieces in her “Mountain Series.” She is trying to represent mountains in her works as places where those who love mountains as she does share the same feelings instead of representing mountains alone as beautiful scenery.
The painter, HASHIGUCHI Yuu, deals with elementary schools in her “School Series,” which represents the majority of her works. However, in her recent works, she deals with mountains as her main theme. Her “Mountain Series” reflects her current life, and a growing number of her works tend to convey dynamism.
HASHIGUCHI, while working at a mountaineering store, takes herself to the mountains and creates her works. The objects in her paintings are “the mountains and people who gather there,” rather than the mountains themselves, and she depicts in her paintings not only the people spending their time healthily and relaxed in the mountains, but also the atmosphere in the variety of nature which she senses in the mountains. HASHIGUCHI says she is more conscious of her viewers when she creates pieces in her “Mountain Series.” She is trying to represent mountains in her works as places where those who love mountains as she does share the same feelings instead of representing mountains alone as beautiful scenery.
EXHIBITION MUSEUM
開催会場の情報
安曇野市豊科近代美術館
中信エリア
- 住所
- 〒399-8205
長野県安曇野市豊科5609-3
- 電話番号
- 0263-73-5638
- 開館時間
- 9:00~17:00
- 閉館日
- 月曜(祝日除く)・祝日の翌日休
「シンビズム2 -信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち-」会期中は開館時間、閉館日が通常と異なっております