ARTISTS
山内 悠
写真
WORKS & COMMENT
作品&コメント
《kumonoue-koya1》2007年
日本語テキストで読む
Read in English Text
僕は以前、全てが相互的に関係しているこの世界を想像し、写真行為もその産物であると思い、写真を撮っていました。しかし、富士山で山小屋に入りその場所で600日間を過ごした体験は特別なものとなりました。
目の前に広がる雲海、その上には無限の宇宙、そして自分の立つ山肌は地球である。富士山は、いま、自分自身が此処にあるという事を心身全てで感じることができる場所です。
その中で山小屋の親父は何かを見つめている。僕はその全てに向き合いました。そして、この世界は実は相互的関係をも含め、全てを包括した全体的な関係であるという事を知り、その意識の中での写真行為が見せてくれる世界がありました。
これは僕にとって大きな旅の始まりでした。いま、僕たちが此処にあるという事。そして此処は何処なのか。それを写真が導き見せてくれる事を僕は信じ、現在、旅は場所を屋久島とモンゴルに変え、続いています。
目の前に広がる雲海、その上には無限の宇宙、そして自分の立つ山肌は地球である。富士山は、いま、自分自身が此処にあるという事を心身全てで感じることができる場所です。
その中で山小屋の親父は何かを見つめている。僕はその全てに向き合いました。そして、この世界は実は相互的関係をも含め、全てを包括した全体的な関係であるという事を知り、その意識の中での写真行為が見せてくれる世界がありました。
これは僕にとって大きな旅の始まりでした。いま、僕たちが此処にあるという事。そして此処は何処なのか。それを写真が導き見せてくれる事を僕は信じ、現在、旅は場所を屋久島とモンゴルに変え、続いています。
I used to imagine this world as a place where everything relates reciprocally and thought of my photographic work as a product of this relationship. However, my extraordinary experience of staying at a hut for mountaineers on Mt. Fuji for 600 days altered my way of thinking.
Seas of clouds spread out in front of my eyes, above which was the endless cosmos, but the surface of the mountain where I stood belongs to the earth. That was the place where I felt I alone exist here with my soul and body. In the hut, the owner of this shanty, an old man, was gazing at something. I faced and felt everything here vis - à - vis. This was how I got to know that the world is globally connected, though it includes mutual relationships. With this new awareness, I came to see a new world created by my photographic work.
Also, this was the beginning of my great journey. The fact is, we exist here, but, where is here? I believe photography will lead me to the answer to this question and, currently, my journey continues at new places such as Yakushima Island and the country of Mongolia.
Seas of clouds spread out in front of my eyes, above which was the endless cosmos, but the surface of the mountain where I stood belongs to the earth. That was the place where I felt I alone exist here with my soul and body. In the hut, the owner of this shanty, an old man, was gazing at something. I faced and felt everything here vis - à - vis. This was how I got to know that the world is globally connected, though it includes mutual relationships. With this new awareness, I came to see a new world created by my photographic work.
Also, this was the beginning of my great journey. The fact is, we exist here, but, where is here? I believe photography will lead me to the answer to this question and, currently, my journey continues at new places such as Yakushima Island and the country of Mongolia.
《kumonoue-oyaji1》2007年
《kumonoue-oyaji9》2006年
《kumonoue-tobira1》2007年
《kumonoue-oyaji3》2006年
《kumonoue-inu1》2007年
《kumonoue-oyaji12》2007年
《kumonoue-koya4》2007年
《kumonoue-oyaji10》2007年
《kumonoue-yama5》2007年
《kumonoue-yama3》2007年
NEWS
山内 悠の関連情報
2018
12/22
(土)
Profile
プロフィール
RELEASE
おもな作品発表歴
- 2006
- 「color imaging contest受賞作品展」(スパイラルガーデン/東京都)
- 2008
- 「color imaging next 新作展」(同)
「写真新世紀展2008」(東京都写真美術館)
- 2010
- 「夜明け」(AKAAKA Gallery/東京都)
- 2011
- 「SUPERNUTUREAL」(MIYAKO YOSHINAGA/アメリカ、ニューヨーク)
「夜明け」(YEBISU ART LABO/愛知県、ALBUS/福岡県、ギャラリーアセンス美術/大阪府、スパイラルガーデン/東京都)
「ヤングポートフォリオ展2011」(清里フォトアートミュージアム/山梨県)
- 2012
- 「DAWN」(MIYAKO YOSHINAGA/アメリカ、ニューヨーク)
- 2013
- 「a new japanese generation」(ArtLigue/フランス、パリ)
「夜明け-DAWN-」(エプサイト/東京都、新宿)
- 2014
- 「夜明け-DAWN-」(渋谷hikarie8/cube1,2,3/東京都)
「原点を、永遠に。」清里フォトアートミュージアム開館20周年記念写真展(東京都写真美術館)
- 2016
- 「TBILISI PHOTO FESTIVAL 2016」(ジョージア、トビリシ)
「ホーリー・マウンテンズ」展(モエレ沼公園/北海道、札幌)
- 2017
- 「やんばるアートフェスティバル」(大宜味村立塩屋小学校/沖縄県)
「パラレルネイチャー」(八ヶ岳美術館/原村)
- 2018
- 「雲の上に住む人」(evam eva yamanashi/山梨県)
COMMENTARY
学芸員の解説
日本語テキストで読む
Read in English Text
数々の奇跡を越えて、ここに在るということ
―山内悠の写真
山内悠にとって大きな転換点となったのは、富士山の山小屋「大陽館」での生活である。当たり前に享受していた都市生活の利便性から遠く離れ、禁欲生活のような暮らしに身を置くなかで、彼は自然の圧倒的な力と、そのなかで生きる人間という存在と向き合うことになった。しかし苛烈な環境のもとで彼が見い出したのは、人間の内に在る宇宙的な広がりであった。
過酷な環境のなかで咲く花のように、「雲の上に住む人」では山小屋の主人が、ざらついた荒々しさを感じさせるモノクロームで撮影される。人間の生臭さとともに、ある真理を体得した人が到達する悟りのような清々しさが画面には表現されている。
一方で、「夜明け」では同じく富士山を舞台に、雲海や日の出の瞬間などの美しく荘厳な光景が焼きつけられる。刻々と変化する光景を捉えようとするこれらの作品には、自然が造り出した造形への作家の感嘆が端的に表されている。
対照的にも思われる人と自然、両者に向けられた視点は、彼にとっては同一のものなのだろう。目に見え形あるものは、そこにたまさか現出しているが実体ではない。人間という現象は自然の現れのひとつであり、人も自然も宇宙の存在として等しく在るのだという「色即是空 空即是色」のような、それぞれの存在への肯定を、私は山内の作品に見る。いずれの姿も、同じ生命の根源から枝分かれした異なる形での姿を力強く写し撮った作品なのである。
彼は現在モンゴルや屋久島でも撮影を続けている。修行する求道者のごとく自身の身をその場に置き、何かを「体得」するときを待って何日間でも撮影を重ねる。山内が写真を通して希求し続けているのは、人=自然=宇宙(世界)の理そのものであろう。
写真の文脈や流行などから距離を置き、目にする全てのものが新鮮で驚きに満ちた子どものような瞳で対象と向き合う。彼の作品は、初めて目にする光景や存在への驚きを、私たちの眼前に鮮やかに現してくれるだろう。
過酷な環境のなかで咲く花のように、「雲の上に住む人」では山小屋の主人が、ざらついた荒々しさを感じさせるモノクロームで撮影される。人間の生臭さとともに、ある真理を体得した人が到達する悟りのような清々しさが画面には表現されている。
一方で、「夜明け」では同じく富士山を舞台に、雲海や日の出の瞬間などの美しく荘厳な光景が焼きつけられる。刻々と変化する光景を捉えようとするこれらの作品には、自然が造り出した造形への作家の感嘆が端的に表されている。
対照的にも思われる人と自然、両者に向けられた視点は、彼にとっては同一のものなのだろう。目に見え形あるものは、そこにたまさか現出しているが実体ではない。人間という現象は自然の現れのひとつであり、人も自然も宇宙の存在として等しく在るのだという「色即是空 空即是色」のような、それぞれの存在への肯定を、私は山内の作品に見る。いずれの姿も、同じ生命の根源から枝分かれした異なる形での姿を力強く写し撮った作品なのである。
彼は現在モンゴルや屋久島でも撮影を続けている。修行する求道者のごとく自身の身をその場に置き、何かを「体得」するときを待って何日間でも撮影を重ねる。山内が写真を通して希求し続けているのは、人=自然=宇宙(世界)の理そのものであろう。
写真の文脈や流行などから距離を置き、目にする全てのものが新鮮で驚きに満ちた子どものような瞳で対象と向き合う。彼の作品は、初めて目にする光景や存在への驚きを、私たちの眼前に鮮やかに現してくれるだろう。
Being – Beyond Innumerous Miracles
The Photographs of YAMAUCHI Yu
YAMAUCHI Yu created his works in a hut on Mount Fuji. While living a kind of ascetic life there, he encountered the overwhelming power of nature and the cosmic world spreading within him. Through the series of photographs of the hut’s owner, YAMAUCHI captures a purified state of mind possessed only by those enlightened by the truth.
On the other hand, YAMAUCHI photographs magnificent scenes such as seas of clouds and the moments of sunrise. The works which captured the scenery changing moment by moment convey his admiration for nature’s creations.
In both works, he vigorously captures different forms born of the same origin. His works vividly represent his astonishment at encountering new sights.
YAMAUCHI Yu created his works in a hut on Mount Fuji. While living a kind of ascetic life there, he encountered the overwhelming power of nature and the cosmic world spreading within him. Through the series of photographs of the hut’s owner, YAMAUCHI captures a purified state of mind possessed only by those enlightened by the truth.
On the other hand, YAMAUCHI photographs magnificent scenes such as seas of clouds and the moments of sunrise. The works which captured the scenery changing moment by moment convey his admiration for nature’s creations.
In both works, he vigorously captures different forms born of the same origin. His works vividly represent his astonishment at encountering new sights.
EXHIBITION MUSEUM
開催会場の情報
安曇野市豊科近代美術館
中信エリア
- 住所
- 〒399-8205
長野県安曇野市豊科5609-3
- 電話番号
- 0263-73-5638
- 開館時間
- 9:00~17:00
- 閉館日
- 月曜(祝日除く)・祝日の翌日休
「シンビズム2 -信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち-」会期中は開館時間、閉館日が通常と異なっております