ARTISTS
末永 恵理
油彩
WORKS & COMMENT
作品&コメント
《源(部分)》2010年
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数年前、あこがれの山に登った。頂上を目指してある地点で立ち止まった時、今までにない感覚になった。空気は透明で澄みきっているのに、ゼロとはほど遠く、明らかに、密度の濃い「気」に充ちていた。
昔、自転車で、長距離を旅していた頃、ある場所一帯に、自分の意識が溶けこんで広がっているような感覚を味わった。
忘れられない場所や、その雰囲気は、視覚的な色や明るさだけでなく、匂いや、湿度、空気なども関係していると思う。
そういうものを、点の重なりで表現しようと試みている。
又は、日々の重なりから生じたものが、思わぬ結果につながることもある。
点は、全ての素ともいえる。物質の原子は点であるし、電波や波動も、実は点が関係しているのではないか。と思っている。最近知った「観測問題」は、意識も粒だという証明ではないか。「無」の概念も、実は沢山の見えない点の集まりではないか?
そのようなことを考えながら、日々点々を描いている。
昔、自転車で、長距離を旅していた頃、ある場所一帯に、自分の意識が溶けこんで広がっているような感覚を味わった。
忘れられない場所や、その雰囲気は、視覚的な色や明るさだけでなく、匂いや、湿度、空気なども関係していると思う。
そういうものを、点の重なりで表現しようと試みている。
又は、日々の重なりから生じたものが、思わぬ結果につながることもある。
点は、全ての素ともいえる。物質の原子は点であるし、電波や波動も、実は点が関係しているのではないか。と思っている。最近知った「観測問題」は、意識も粒だという証明ではないか。「無」の概念も、実は沢山の見えない点の集まりではないか?
そのようなことを考えながら、日々点々を描いている。
Several years ago, I climbed a mountain which I had long wished to climb. I stopped at a place in the middle of the mountain path, and there I had a feeling which I had never experienced before. Though the air was transparent and clear, I felt something unusual in it. It was far from “emptiness.” The place was undoubtedly filled with dense “spirituality.”
On a bicycle journey long ago, I felt my consciousness being dissolved, yet expanding everywhere.
Unforgettable places or their atmospheres are relevant to not only visual factors such as color and brightness, but also smell, humidity and the air itself.
I try to express my impressions of these sites and the ambiences using dots.
Furthermore, layered dots resulting from my daily work of creating dots can produce serendipitous results.
Dots are found in everything. Atoms, which make up matter, are like infinitesimally small dots. I guess radio waves and wave-like motions may have something to do with photons or dots. The “Measurement Problem,” which I came to know of lately, proves that consciousness is also made up of particles. Doesn’t the concept of “nothingness” also consist of a series of invisible innumerable dots?
Running such things about in my mind, I draw dots day in and day out.
On a bicycle journey long ago, I felt my consciousness being dissolved, yet expanding everywhere.
Unforgettable places or their atmospheres are relevant to not only visual factors such as color and brightness, but also smell, humidity and the air itself.
I try to express my impressions of these sites and the ambiences using dots.
Furthermore, layered dots resulting from my daily work of creating dots can produce serendipitous results.
Dots are found in everything. Atoms, which make up matter, are like infinitesimally small dots. I guess radio waves and wave-like motions may have something to do with photons or dots. The “Measurement Problem,” which I came to know of lately, proves that consciousness is also made up of particles. Doesn’t the concept of “nothingness” also consist of a series of invisible innumerable dots?
Running such things about in my mind, I draw dots day in and day out.
《20160403》2016年
《20160402》2016年
《20160401》2016年
《Tree line 2》2018年
《Galaxy1(部分)》2014年
NEWS
末永 恵理の関連情報
2018
12/15
(土)
Profile
プロフィール
末永 恵理SUENAGA Eri
油彩
- 1971
- 東京都生まれ
- 1994
- 東京藝術大学美術学部油画科卒業
- 1996
- 東京藝術大学大学院壁画科修了
- 1999
- 長野県諏訪郡富士見町に移住
RELEASE
おもな作品発表歴
- 2000
- 個展「木の絵展」(悠遊館/岡谷市)
- 2001
- 個展「キジン展」(悠遊館/岡谷市)
- 2002
- 個展「景展」(悠遊館/岡谷市)
- 2003
- 個展(felice/東京都、麻布十番)
- 2003-2004
- 個展「木の神、木々への想い」(八ヶ岳美術館/原村)
- 2005
- 個展「雪の山、雪の森」展(ぎゃらりい春原/富士見町)
- 2006
- 個展(おいでやギャラリー/山梨県、長坂町)
- 2007
- 個展「BIGMANとキジン」展(茅野市民館ギャラリー/茅野市)
- 2008
- 個展(おいでやギャラリー/山梨県、長坂町)
- 2009
- 個展(おいでやギャラリー/山梨県、長坂町)
- 2010
- 個展(おいでやギャラリー/山梨県、長坂町)
「感覚の向こうへ」展(小海町高原美術館/小海町)
- 2011
- 個展(おいでやギャラリー/山梨県、長坂町)
- 2012
- 個展(おいでやギャラリー/山梨県、長坂町)
- 2013
- 個展(岩谷画廊/諏訪市)
- 2014
- 個展(Gallery Amano/山梨県、小淵沢町)
- 2015
- 個展(Gallery Amano/山梨県、小淵沢町)
- 2016
- 「interactive 展」(Gallery HINOKI/東京都、京橋)
- 2017
- 「パラレル・ネイチャー」展(八ヶ岳美術館/原村)
- 2018
- ポーランド、スタリ・ソンチにて滞在制作
COMMENTARY
学芸員の解説
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末永恵理 信州でひらいた創作の路
末永恵理はいま、無数の点あるいは粒の集積がキャンバスのあらゆる空間を埋め尽す絵画を制作している。ごく小さな、それでも一つひとつ違う点と周囲の空間との絶妙なまじわりは、ことのほか印象深い。近づいて観るといびつなところを見つけたり、かすれていたり手仕事の痕跡を感じる。次に、少し距離を取って鑑賞してみる。すると印象が変化し濃淡のある豊かな色彩は重層的で、美的世界を創出する。
ある人にはその黄色い粒がミモザの花々に見えてくるし、ある人には風景として、夏の終わりの寂しさやひだまりの優しさをイメージする装置となる。知覚の刺激から想起されるのは、忘れかけていた記憶であったり、明るい未来への予感であったり、キャンバスのなかは小宇宙の様相だ。
末永は東京で生まれ育った。大学時代は自転車で一人旅を好み、東北地方などに旅行に出かけてはデッサンを重ねた。身体を鍛え感性を研ぎ澄まして帰京すると、その経験を創作に昇華させた。器用な性格ではなく、画業には強いこだわりを持っていた。そのせいか東京では画業と生活とのはざまで悩んだこともあったという。
しかし、1999年の夏に八ヶ岳山麓へと移り住んでからは、豊かな自然環境のもと、美術とは無縁の仕事を自分に課し、毎年個展を開催し作品発表すると決め、純粋に描きたいと思うものを追求してきた。
2010年には小海高原美術館でのグループ展でチャコールペンシルだけを使用して描くシリーズを発表した。庭園の敷石のような大胆な網目模様は、木炭の濃淡で徐々に表現していくという。葉や落水などをイメージさせる矩形を逸脱した輪郭は強調され、われわれを異空間へといざなう。
そして2014年に「galaxy」シリーズを発表し、宇宙を思わせる巨大な画面に数多の星をちりばめ、科学的な視点を持つ新たな地平をひらいた。末永はこれからも信州を拠点に創作の路を走り続けるだろう。本展がそのステップとなることを願う。
ある人にはその黄色い粒がミモザの花々に見えてくるし、ある人には風景として、夏の終わりの寂しさやひだまりの優しさをイメージする装置となる。知覚の刺激から想起されるのは、忘れかけていた記憶であったり、明るい未来への予感であったり、キャンバスのなかは小宇宙の様相だ。
末永は東京で生まれ育った。大学時代は自転車で一人旅を好み、東北地方などに旅行に出かけてはデッサンを重ねた。身体を鍛え感性を研ぎ澄まして帰京すると、その経験を創作に昇華させた。器用な性格ではなく、画業には強いこだわりを持っていた。そのせいか東京では画業と生活とのはざまで悩んだこともあったという。
しかし、1999年の夏に八ヶ岳山麓へと移り住んでからは、豊かな自然環境のもと、美術とは無縁の仕事を自分に課し、毎年個展を開催し作品発表すると決め、純粋に描きたいと思うものを追求してきた。
2010年には小海高原美術館でのグループ展でチャコールペンシルだけを使用して描くシリーズを発表した。庭園の敷石のような大胆な網目模様は、木炭の濃淡で徐々に表現していくという。葉や落水などをイメージさせる矩形を逸脱した輪郭は強調され、われわれを異空間へといざなう。
そして2014年に「galaxy」シリーズを発表し、宇宙を思わせる巨大な画面に数多の星をちりばめ、科学的な視点を持つ新たな地平をひらいた。末永はこれからも信州を拠点に創作の路を走り続けるだろう。本展がそのステップとなることを願う。
伊藤 幸穂 (木曽町教育委員会)
A Path for Creating Art Beginning in Shinshu
SUENAGA Eri creates paintings with innumerable dottings which fill her canvas.
When we look closely at her paintings, we see the traces of her brush strokes. While viewing them from a distance, we can see her rich hues, creating light and shade, are multi-layered and beautiful.
SUENAGA was born and raised in Tokyo. While living in Tokyo, she enjoyed bicycle trips on her own to various places, but was troubled with the conflict that existed between her livelihood and pursuing her art. Since moving to the foot of Mt. Yatsugatake in 1999, she has held a solo exhibition annually. In 2014, she sowed a large canvas with numerous stars, conjuring an image of cosmic space, opening a new horizon for her art depicting a kind of scientific viewpoint. SUENAGA keeps forging new paths for creating art, based in Shinshu.
When we look closely at her paintings, we see the traces of her brush strokes. While viewing them from a distance, we can see her rich hues, creating light and shade, are multi-layered and beautiful.
SUENAGA was born and raised in Tokyo. While living in Tokyo, she enjoyed bicycle trips on her own to various places, but was troubled with the conflict that existed between her livelihood and pursuing her art. Since moving to the foot of Mt. Yatsugatake in 1999, she has held a solo exhibition annually. In 2014, she sowed a large canvas with numerous stars, conjuring an image of cosmic space, opening a new horizon for her art depicting a kind of scientific viewpoint. SUENAGA keeps forging new paths for creating art, based in Shinshu.
Ito, Sachiho (Kiso-machi Board of Education)
EXHIBITION MUSEUM
開催会場の情報
安曇野市豊科近代美術館
中信エリア
- 住所
- 〒399-8205
長野県安曇野市豊科5609-3
- 電話番号
- 0263-73-5638
- 開館時間
- 9:00~17:00
- 閉館日
- 月曜(祝日除く)・祝日の翌日休
「シンビズム2 -信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち-」会期中は開館時間、閉館日が通常と異なっております