呼吸のように続ける
YAMAUCHI Koichi
インスタレーション、立体造形、絵画
山内 孝一
YAMAUCHI Koichi
インスタレーション、立体造形、絵画
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病を機に身体との対話がはじまり、自身への異化作業がはじまった。
視線の焦点が物の表面で結ばれるように、「意識の焦点」はその表面の向こう側、対象内部にまでおよんで、その焦点を結ぶことに気付いた。「意識の焦点」とはレンズが焦点を結ぶのに似ている。物を見るときのように意識(レンズ)の焦点を不可視である身体内部位にあてる(イメージする)とそこの部位がかすかに反応する。視覚的な行為と同時に触覚的なフィードバックが起こる、それは視線でイメージした部位に触れる感覚である。
その感覚を使い、自身の内側すべてを旅し終えた瞬間、私の身体が不透明でなく透明であったことに驚嘆した。観る(能動)と触れられる(受動)、「ふたつ」は実は「ひとつ」だった。
制作現場ではロジックの罠がいつも邪魔をする。平面作品素材の銀箔の白と黒(光と物質)。インスタレーションではフォーマットと物質化、重心と非重力、時間/空間と空間/時間、システムと生身の身体…etc。
視線の焦点が物の表面で結ばれるように、「意識の焦点」はその表面の向こう側、対象内部にまでおよんで、その焦点を結ぶことに気付いた。「意識の焦点」とはレンズが焦点を結ぶのに似ている。物を見るときのように意識(レンズ)の焦点を不可視である身体内部位にあてる(イメージする)とそこの部位がかすかに反応する。視覚的な行為と同時に触覚的なフィードバックが起こる、それは視線でイメージした部位に触れる感覚である。
その感覚を使い、自身の内側すべてを旅し終えた瞬間、私の身体が不透明でなく透明であったことに驚嘆した。観る(能動)と触れられる(受動)、「ふたつ」は実は「ひとつ」だった。
制作現場ではロジックの罠がいつも邪魔をする。平面作品素材の銀箔の白と黒(光と物質)。インスタレーションではフォーマットと物質化、重心と非重力、時間/空間と空間/時間、システムと生身の身体…etc。
Illness triggered me to communicate with my body and started the catabolism within myself. I came to notice that “focus of consciousness” converged beyond the surface, i.e., inside an object, unlike our eyes focused on the surface of the object. The mechanism of “focus of consciousness” is similar to that of a lens. If you focus (imagine) your consciousness (lens) on an inner part of your body, just like you observe something, that very part reacts subtly. A tactile feedback occurs simultaneously in parallel with your action of seeing. You feel that you have touched the very part you have imagined with your eyes.
At this time, after finishing my travel around all the inner parts of my body by using this sensation, I was astonished to realize that my body was not opaque, but indeed transparent. To see (active mode) and to be touched (passive mode), these “two” different sensations were originally “one” sensation.
While producing my works, a logical trap always interrupts me. For example, white and black colors of silver foil as material for two-dimensional works. For installations, format and its materialization, gravity and anti-gravity, time/space and space/time, system and the living body………… etc.
At this time, after finishing my travel around all the inner parts of my body by using this sensation, I was astonished to realize that my body was not opaque, but indeed transparent. To see (active mode) and to be touched (passive mode), these “two” different sensations were originally “one” sensation.
While producing my works, a logical trap always interrupts me. For example, white and black colors of silver foil as material for two-dimensional works. For installations, format and its materialization, gravity and anti-gravity, time/space and space/time, system and the living body………… etc.
主な経歴
Career
- 1959
- 群馬県桐生市生まれ
- 1983
- 和光大学人文学部芸術学科卒業
- 1996
- 長野県下伊那郡阿智村に移住、現在、同郡高森町在住
主な作品発表歴
Release
- 1983
- 個展「Lines59→83」(駒井画廊/東京都)
- 1984
- Personal Space Works展(神奈川県民ホール/神奈川県)以降2回
- 1997
- 「コラボレーションⅢ」(長野県伊那文化会館/伊那市)
個展「音」(アートハウス/飯田市)以降連続
- 1998
- 「コラボレーションⅣ」(長野県伊那文化会館/伊那市、長野県飯田創造館/飯田市)
WS「石を立てる・音を見る」(阿知川河原/阿智村)
個展「LET GOシリーズ」(Galleryウーム/広島県)
- 1999
- 個展「Mixed Linesシリーズ」(現代詩資料館/群馬県)
- 2000
- 「いのちを聴く」(杜の市/駒ヶ根市)以降2回
- 2002
- WS「聞こえますか?…の音」(辰野美術館/辰野町)
- 2003
- 「第3回現代の創造展」(飯田市美術博物館/飯田市)以降連続
- 2007
- WS「土器、野焼き」(杵原学校/飯田市)以降継続
個展「ドローイング」(風の谷絵本館/飯島町)以降連続
- 2010
- 「三遠南信アート展」(秋野不矩美術館/静岡県、豊橋市美術館/愛知県、飯田市美術博物館/飯田市)
- 2012
- 飯伊新鋭美術家による50人展(長野県飯田創造館/飯田市)
- 2014
- WS「石を立てる・身体を澄ます」(天竜川坂戸橋下/中川村)
- 2015
- 「Art Complex in桐生」(桐生市有鄰館/群馬県)以降連続、「New Artist Unit Exhibition 13回展」(国立新美術館/東京都)
- 2016
- 「上松邸オープンギャラリー2016」(上松邸/飯田市)
「名栗湖国際野外美術展」(埼玉県)
- 2017
- WS「お面を作ってヘンシン」(たつの芸術村・辰野美術館/辰野町)
個展「拝殿インスタレーション」(萩山神社/高森町)
- 2018
- Mixed Media2018(GALLERY ART POINT/東京都)
情報
Information
Event 2019/10/20 (日)
終了しました【時間・内容の変更】山内孝一 トーク&ワークショップ「点を探して」
10日20日(日)行われる山内 孝一ワークショップ「石を立てる」は時間・内容が変更になりました。
13:30~15:30
上田市立美術館2階 ホワイエ
Event 2019/10/12 (土)
終了しました【イベント中止】[上田市立美術館] オープニング・ギャラリートーク
一般財団法人長野県文化振興事業団・長野県では、長野県内でも台風19号の影響が予想されることから、10月12日(土)午後1時30分より上田市立美術館会場にて開催を予定しておりました「シンビズム3 オープニング・ギャラリートーク」は中止とさせていただきます。
なお、シンビズム3展をはじめ同館の展覧会は通常どおり開催をいたします。
Event 2019/10/05 (土)
終了しました山内 孝一 公開制作
10:00~12:00
13:00~16:00
協力:上田高等学校
Event 2019/09/28 (土)
終了しました山内 孝一 公開制作
10:00~12:00
13:00~15:00
協力:上田千曲高等学校
News 2019/09/20 (金) 更新
[東信会場]上田市立美術館と出展作家情報を更新しました。
呼吸のように続ける
学芸員の解説
山内孝一は自らの制作について繰り返し綴っている。
─リズミカルで一定なサイクルを保つ呼吸の様に、全ての感覚器官を使い自然・世界を吸い<Impress>それらが全身体に吸収され形を変えて吐き出される<Express>どちらか一方でも欠けたとき、呼吸と同様に命を続けることができないと私は想っている─
山内には過酷な闘病経験がある。大学卒業後、間もなく画材屋に勤務。初個展も行い順調な作家生活をスタートさせた直後、3年間におよび制作活動の中断を余儀なくされる。無機質な病院の天井を眺めるしかなかった日々から抜け出そうと山内はあらゆる手段を探り出す。そして身体のなかを自在に「意識」すること、つまり自分の身体が透明になった感覚を覚え、全身と対話ができるようになったという。病を得たことでそれまでの価値観が崩れ、美術実践とは何かを改めて問いはじめる。いままでの物質の部分(目に触れている部分)だけで評価されてきたものではなく、日常生活そのものがアートであることに気付いたのかもしれない。
1996年、にぎやかな横浜から長野県に居を移す。自然農法に取り組みながら、自然物からインスピレーションを受けた作品を多数制作。ほかに平面・立体・ワークショップとジャンルの枠を超えて活動している。
「錐体」シリーズは、2.5mほどの高さに組みあげたススキの立体を多数設置した。その空間には人が入れるという体験型だ。作品のなかに入り、身体の大きさや熱などの変化するすべてに「意識」を向けることで、まるでレンズが1点に焦点を結ぶように、熱や磁気を帯びたような不思議な作用を体感できる。その後、グラスファィバーを使った「空に思考する」シリーズへと展開していく。
97年から継続して行われている「フィールドワーク」シリーズは、河原で石のバランスを取りながら立てるワークショップである。天竜川の支流・阿知川で行われた作品《沈黙のオーケストラ》は以後、企業の広告媒体などに採用された。大地の中心へ向かう直線を引くというコンセプトのもと、巨大な石を全身で支えながら片手で要の小石2個によりバランスを取り、探りながら置き両手をはなす。石は静止する。そのプロセスで数分間、石と作家は一体となる。その石を立たせるために使う「要の小石」と、さらに「何か」…自身の身体を立たせるために使っている「筋肉」と、さらに「何か」…この「何か」の微妙な共通点に興味深いものがあるという。
「造形的・美術的な行為、それに日常と自分の身体さえも全部ひとつになった気がする」と語る山内は、「意識の焦点」を体得してから五感にとどまらず第六感もが研ぎすまされ、よりモノ(作品)と場に対して自由度が増したのではないだろうか。
南アルプスを臨む天竜川の河岸段丘にアトリエはある。農業が中心の町は秋になると田の神を待つ。ゆったりとした時のなかで地域に溶け込み、呼吸するようにとどまることなく制作を続けていく。
─リズミカルで一定なサイクルを保つ呼吸の様に、全ての感覚器官を使い自然・世界を吸い<Impress>それらが全身体に吸収され形を変えて吐き出される<Express>どちらか一方でも欠けたとき、呼吸と同様に命を続けることができないと私は想っている─
山内には過酷な闘病経験がある。大学卒業後、間もなく画材屋に勤務。初個展も行い順調な作家生活をスタートさせた直後、3年間におよび制作活動の中断を余儀なくされる。無機質な病院の天井を眺めるしかなかった日々から抜け出そうと山内はあらゆる手段を探り出す。そして身体のなかを自在に「意識」すること、つまり自分の身体が透明になった感覚を覚え、全身と対話ができるようになったという。病を得たことでそれまでの価値観が崩れ、美術実践とは何かを改めて問いはじめる。いままでの物質の部分(目に触れている部分)だけで評価されてきたものではなく、日常生活そのものがアートであることに気付いたのかもしれない。
1996年、にぎやかな横浜から長野県に居を移す。自然農法に取り組みながら、自然物からインスピレーションを受けた作品を多数制作。ほかに平面・立体・ワークショップとジャンルの枠を超えて活動している。
「錐体」シリーズは、2.5mほどの高さに組みあげたススキの立体を多数設置した。その空間には人が入れるという体験型だ。作品のなかに入り、身体の大きさや熱などの変化するすべてに「意識」を向けることで、まるでレンズが1点に焦点を結ぶように、熱や磁気を帯びたような不思議な作用を体感できる。その後、グラスファィバーを使った「空に思考する」シリーズへと展開していく。
97年から継続して行われている「フィールドワーク」シリーズは、河原で石のバランスを取りながら立てるワークショップである。天竜川の支流・阿知川で行われた作品《沈黙のオーケストラ》は以後、企業の広告媒体などに採用された。大地の中心へ向かう直線を引くというコンセプトのもと、巨大な石を全身で支えながら片手で要の小石2個によりバランスを取り、探りながら置き両手をはなす。石は静止する。そのプロセスで数分間、石と作家は一体となる。その石を立たせるために使う「要の小石」と、さらに「何か」…自身の身体を立たせるために使っている「筋肉」と、さらに「何か」…この「何か」の微妙な共通点に興味深いものがあるという。
「造形的・美術的な行為、それに日常と自分の身体さえも全部ひとつになった気がする」と語る山内は、「意識の焦点」を体得してから五感にとどまらず第六感もが研ぎすまされ、よりモノ(作品)と場に対して自由度が増したのではないだろうか。
南アルプスを臨む天竜川の河岸段丘にアトリエはある。農業が中心の町は秋になると田の神を待つ。ゆったりとした時のなかで地域に溶け込み、呼吸するようにとどまることなく制作を続けていく。
加藤 泰子(心の花美術館 in 上田)
Exhibition Artists & Hall
Ueda City Art Museum
2019/10/12 - 2019/11/10
終了しました。
上田市立美術館
- 〒386-0025
長野県上田市天神3-15-15 サントミューゼ内 - [電話番号]0268-27-2300
- [開館時間]9:00~17:00
- [休館日]火曜休(祝日の場合は翌日)
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出展作家
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