絵画・インスタレーション
ムカイヤマ 達也
MUKAIYAMA Tatsuya
《1000の面》 2017年
略歴
- 1978
長野県伊那市生まれ
- 2007−
独学
おもな作品発表歴
- 2008
「東京コンテンポラリーアートフェア」(東美アートフォーラム/東京都)
「Light and You on Canvas」(The Artcomplex Center of Tokyo /東京都)
- 2009
「トーキョーワンダーウォール賞展2009」(東京都現代美術館/東京都)
「拝啓、ワールドホール」(Bunkyo Art /東京都)
「アートフェア東京2009」(東京国際フォーラム /東京都)
- 2010
「トーキョーワンダーウォール賞展2010」(東京都現代美術館/東京都)
- 2012
「トーキョーワンダーウォール賞展2012」(東京都現代美術館/東京都)
- 2013
「損保ジャパン美術賞展2013」(損保ジャパン東郷青児美術館/東京都)
「第3回Dアートビエンナーレ」(ダイテックサカエビル/愛知県)
- 2015
「高遠エフェクト」(信州高遠美術館/伊那市)
「画布を分つと二つになる」(Art TRACE gallery/東京都)
- 2016
「絵画検討会2016」(TURNRE GALLERY/東京都)
- 2017
「Double Line」(Neon Gallery/ヴロツワフ・ポーランド)
「私たちは枠の外にいたことがない」展(長野県伊那文化会館/伊那市)
「プロジェクト絵画と嘘の積分」展(awai art center/松本市)
- 2018
「Limited Vision JP Edition 02 Rationing and disruption」(3331 Arts Chiyoda/東京都)
「Limited Vision PL Edition」(National Forum of Music Wroclaw/ヴロツワフ・ポーランド)
「乱離情景」展(アンフォルメル中川村美術館/中川村)ほか多数
おもな受賞歴
- 2009・10・12
トーキョーワンダーウォール入選
- 2013
第3回Dアートビエンナーレ 入選
損保ジャパン美術賞 FACE 2013 入選
おもな助成金受給歴
- 2017
アーツカウンシル東京 東京芸術文化創造発信助成
絵画を成り立たせるもの その境界線を綱渡りし続ける
ムカイヤマ達也は、1978年、長野県伊那市に生まれた。大学卒業後、デザイン会社勤めを経て、2007年より独学で、おもに絵画や、絵画を用いたインスタレーション作品を制作し、発表している。もともとは鑑賞者として美術の造詣を深めてきたという彼が、作り手である美術家として活動をはじめたのは、ごく自然な流れといえる。
ムカイヤマにとって「絵画を制作する」という行為は、現在の社会や状況、それらの構造といった実体のないものを可視化し、読み解くための有用な手段であるという。その制作や作品の根底に共通しているものは、「価値観が固定化されることへの反発」である。彼が制作をする上で、美術の古典的な形式である「絵画」をあえて選択している理由はここにある。
ムカイヤマにとっての絵画とは、社会や、そこに生きるわれわれに起こり得るさまざまな現象にアクセスするための手段であると同時に、存在そのものを疑い続ける対象でもある。絵画が成り立つための条件を常に再考し、その境界線の上を綱渡りし続ける。自身が立っている曖昧な現実世界の中で、さも不動であるかのように振る舞う全てのもの、その不自然さに対して疑念を示し続ける。それが、彼の絵画制作に対する姿勢である。
《あなたにとって虚構でも、それは私の上に実存するもの》(2015年)は、絵画と立体物で構成されるインスタレーション作品である。画中に描かれているイーゼルやキャンバスなどは、立体物と同じ物のように思える。そこで、立体物を絵画のモチーフとして解釈してみると、絵画と同じ空間にモチーフが置かれているという状況に対して違和感を覚える。鑑賞を深めるほどに、リアリティの所在が曖昧になっていくような、そんな感覚になる。
ここで、ムカイヤマの制作と作品の特徴を取り上げるためにも、本作の制作プロセスの大筋を紹介したいと思う。
まずは、設計用のモデリングソフトで設計図を描くようにドローイングをして、モチーフのかたちを作り、それをキャンバスに描く。描く工程では、マスキングテープでキャンバスを部分的に覆い、左官のコテやペインティングナイフなどを使って、マスキングテープの枠の中に絵の具を全て収めるという行為を繰り返し、画面を作っていく。そして、キャンバス素材を使って、立体物として物質化する。
「私が、絵画というメディアを使ってやりたいと思うのは、例えば前提のようなものを共有していない者同士が、どうしたらコミュニケーションできるのか、対話が成り立つのか、ということです。」※1
絵画は、人それぞれが持つ、異なる「環世界」を共有するための装置に成り得る、とムカイヤマは言う。「環世界(環境世界)」とは、生物学者のヤーコプ・フォン・ユクスキュル(1864~1944)が提唱した概念である。すべての生物は、それぞれ種特有の知覚世界を持って生きており、それを主体として行動している、という考え方のことを指す。たとえば「マダニ」というダニの一種は、嗅覚、触覚、温度感覚のみで、獲物となる哺乳動物を感知することによって身体を動かし、その作用の結果として、獲物の生き血にありつく。マダニにとっては、獲物の臭いと体温、皮膚の触覚、それらを知覚することによって起こされるいくつかの行動だけが、世界のすべてである、というものだ。
それぞれの生物は、独自の環世界の中で生きており、環境をどのように認識しているかによって、見えている世界がまったく違う。この環世界の考え方は、われわれの実生活においても当てはめて見ることができる。同じ物事であっても、人によって感じ方がまったく異なる、ということを実感する場面は、往々にしてある。
われわれは、「ムカイヤマが持つ環世界」を可視化した「絵画」という装置を通して、彼の環世界を共有するとともに、自分自身の知覚や、体験から成る価値観の信憑性と改めて向き合うことになるのである。
※1 『絵画検討会2016 記録と考察、はじめの発言』(アートダイバー、2017年)
信州高遠美術館
小松 由以
MUKAIYAMA Tatsuya, who continues producing works as a self-taught painter since 2007, mainly produces paintings and works of installation incorporating paintings. He visualizes the contemporary social structure and its situation which he himself views by way of replacing them with materials of works of art. Moreover, by incorporating digital technique into the production process, such as creating drawings with modeling software, he creates various “reversed conditions” in his works. By experiencing his theory and works born from his philosophy, we will face, once again, our perception and credibility of our sense of value formed by our own experiences.
Takato Museum of Arts
Komatsu, Yui
会場情報
終了しました
2023
07.01SAT
09.03SUN
- ・長野新幹線長野駅から、長野電鉄に乗換え湯田中駅下車、志賀高原方面行バスにてスノーモンキーパーク停留所下車、徒歩1分。またはタクシーにて8分。
・上信越自動車道、信州中野I.C.から国道292号線(志賀中野線)経由15分。駐車場60台。