丸山晩霞記念館
Maruyama Banka Memorial Museum
終了しました
2023
08.05SAT
08.27SUN
丸山晩霞記念館
- 長野県東御市常田505-1
- 0268-62-3700
- 9:00-17:00
- 月曜休、2023.08.22休
- ・お車の場合上信越自動車道 東部湯の丸ICより約2分
・鉄道の場合長野新幹線JR上田駅にてしなの鉄道田中駅下車 徒歩約15分 タクシー約3分
エッセイ
作品を見る、展示室を見る
上田市立美術館
山極 佳子
美術作品の大きな働きのひとつは、鑑賞者にイリュージョンを見せる、ということだろうか。絵画も彫刻も、それを構成する絵の具や木材、金属などを媒介して、その先に別世界を見せる。視覚芸術であるところの美術が、鑑賞者によって見え方を変えるのはその〝媒介〟の存在によるところが大きいのだろう。目の前の作品自体はどうしてもリアルな物体であり、その実体感は作品を運ぶ手にのしかかる重量や、展覧会においては展示環境や用具の選定の際に、より実感される。また、作家自身も現実を生きるリアルな存在である。〝長野県下の学芸員が主役〟という「シンビズム」では、展示される作品をよりメタ的に、イリュージョンを構成する現実の事物から語ることが求められるかもしれない。
赤羽史亮の絵画は、平面作品ながら絵具を過剰なまでに使ったもので、物質感が強い。以前は盛り上げ材などを使わず、絵具だけを固めて画面を隆起させていたためキャンバスが非常に重くなってしまい、作品搬入を手伝う友人を困らせたと、笑って話す。なんとも正直な制作態度で作られた作品は、壮大な生命の物語を描きつつ、どこか馴染み深いようにも感じられる。画面中に這う線は植物の根か粘菌か血管か、動き出しそうな不定形の塊は、虫か内臓か卵なのか。いずれにせよ、人の体内や地中など、中に中にもぐり込んでいくエネルギーを感じさせる。絵具と生命がぎっしりとうごめくような画面は、鑑賞者一人ひとりの身体に、どのような触感で再生されるのだろうか。
長門裕幸は、県内の高校に美術教諭として勤務しつつ制作活動を続けている作家だ。各赴任先で美術部顧問を勤めて多くの生徒の制作活動に携わり、時には美術の道に進んだ卒業生と合同展を開くなど、次世代の育成を精力的に行っている。
2作家の作品展示会場となる丸山晩霞記念館は、東御市文化会館サンテラスホール内に併設された美術館であり、日本の水彩画を語る上で欠かせない人物、丸山晩霞(1867−1942)の作品が常設展示されている。
今回は中央玄関から見える展示ホールを中心に、回廊状に延びる展示室に2名の現代作品が展覧される。ある程度の計画はありつつも、「展示室に作品が並ぶまでどんな会場になるのか分からない」という要素の強い展示かと思う。作品一つひとつはもちろん、「この作品たちが並ぶ会場に居合わせる」ことそのものを、来館者と一緒に楽しんでいきたい。
ESSAY