Artist
参加アーティスト
サム・プリチャード
Sam Pritchard
>《Scramble Crossing, Shibuya, Tokyo スクランブル交差 渋谷 東京》2014年
Works & Comment
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私が子どもの頃、ガジェットやおもちゃの多くは、任天堂、セガ、カシオ、ソニーなどの日本の企業の製品でした。これらは私に日本が未来的で先進的な地であるという先入観を与えました。
大学で写真を学び、ロンドンで写真のレタッチをして働いたあと、私が想像していた、まるでSF小説にあるような大都市を確かめるために日本に移転しました。
しかし、日本の日常生活の現実は、ほかの先進国に比べても未来的ではないように感じました。そこで≪Land of Technology≫プロジェクトで、私が幼少の頃抱いていた「デジタル未来世界」ともいうべき幻影を作り出そうとしたのです。
これとは対照的に、最近の私のプロジェクトである≪A Classroom with a View≫は、ずっと昔の「家」に帰ったような場所である、長野の山々に囲まれた田舎の小学校に焦点を当てています。
大学で写真を学び、ロンドンで写真のレタッチをして働いたあと、私が想像していた、まるでSF小説にあるような大都市を確かめるために日本に移転しました。
しかし、日本の日常生活の現実は、ほかの先進国に比べても未来的ではないように感じました。そこで≪Land of Technology≫プロジェクトで、私が幼少の頃抱いていた「デジタル未来世界」ともいうべき幻影を作り出そうとしたのです。
これとは対照的に、最近の私のプロジェクトである≪A Classroom with a View≫は、ずっと昔の「家」に帰ったような場所である、長野の山々に囲まれた田舎の小学校に焦点を当てています。
Lots of the electronic gadgets and toys from my childhood were products from Japanese companies like Nintendo, Sega, Casio, Sony, etc. This technology instilled in me a preconception of Japan as being a very futuristic place.
After studying photography at university and working as a retoucher in London, I relocated to Japan to discover if it was the science fiction metropolis I had imagined.
However, the reality of daily life here seems no more futuristic than it is in any other modern, developed country. But in my Land of Technology project, I tried to create the illusion that it is some kind of digital future world that lives up to my childhood expectation.
In contrast, my latest project, A Classroom with a View, focuses on the daily goings on of a rural elementary school located in the mountains of Nagano – the place I have called home for the past decade.
After studying photography at university and working as a retoucher in London, I relocated to Japan to discover if it was the science fiction metropolis I had imagined.
However, the reality of daily life here seems no more futuristic than it is in any other modern, developed country. But in my Land of Technology project, I tried to create the illusion that it is some kind of digital future world that lives up to my childhood expectation.
In contrast, my latest project, A Classroom with a View, focuses on the daily goings on of a rural elementary school located in the mountains of Nagano – the place I have called home for the past decade.
>《Land of Technology:Tocho Mae, Nishi Shinjuku, Tokyo 都庁前 西新宿 東京》2014年
>《Tower Records, Shibuya, Tokyo タワーレコード 渋谷 東京》2014年
>《Iidabashi Station, Iidabashi, Tokyo 飯田橋駅 飯田橋 東京》2014年
>《Tokyo Sky Tree, Asakusa, Tokyo 東京スカイツリー 浅草 東京》2014年
>《Aoyama Technical College, Shibuya, Tokyo 青山製図専門学校 渋谷 東京》2012年
>《Ariake Junction, Ariake, Tokyo 有明ジャンクション 有明 東京》2009年
>《A Classroom with a View: Spring: Rice Planting 春:田んぼ絵》2017年
>《Summer: Sports Day 夏:運動会》2016年
Profile
サム・プリチャード Sam Pritchard
写真
- 1982
- イギリス生まれ
- 1998
- テルフォードニューカレッジアート&デザイン写真専攻入学
- 2001
- ウエストミンスター大学写真アート専攻入学
- 2004
- ロンドンの建築写真スタジオ「CGP Design Ltd.」でレタッチャーとして勤務
- 2008
- 来日、英会話教室などに勤務
- 2009
- 須坂市ALTとなる
- 2012
- 東御市立田中小学校、滋野小学校ALT
- 2014
- 東御市立滋野小学校、和小学校ALT
主な受賞歴
- 2015
- コニカミノルタフォトプレミオ受賞
主な作品発表歴
- 2015
- KONICA MINOLTA PLAZA(東京都、新宿)
個展(Parades Gallery/松本市)
- 2016
- 大西道男と二人展(東御市中央公民館/東御市)
学芸員の解説
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未来都市と農村−イギリス人先生の夢と現実
サムは建築家の父の影響を受け、イギリスで育った。彼の日常には、Made in Japanのゲーム機器、IT機器、アニメーションがあふれ、これらは彼に伝統と先端が混在するロンドンの街とはまったくちがった、世界最先端の国・日本、未来的大都市・東京を強くイメージさせた。彼は、このバーチャルな世界がそのまま実在の日本であると思っていたのである。
2008年、サムはそれを確かめるために日本にやってきたが、彼の思い描いていた日本とはちがう風景があった。しかし彼は自分のイメージを、東京の夜に探し求めたのである。彼は写真家・佐藤信太郎氏に強い影響を受けているという。しかし両者の「東京の夜」はまったくちがう印象を受ける。
サムの代表作である≪Land of Technology≫(2014)は、日本人の私にとって異次元の世界に映る。人の気配、雑踏、臭いが徹底的に消し去られ、時間も感じさせない無機質な世界である。
一方、佐藤信太郎氏の作品からは、人びとの生活感や人間模様、喧噪、アジア的空気感ともいうものが強烈に感じられる。
このちがいはどこから生じるのだろうか。佐藤信太郎氏は「東京の今を、未来に残す記録と、歴史を背景としたその場所特有の雰囲気にこだわっている」という。しかし、サムは、あくまで自分で思い描いていた未来的な世界を、現実のなかに追い求めている。東京の夜景に、自分のイメージを重ね、切り取り、そして高度なレタッチの技術を駆使して、作り上げているのである。
さて最新作の≪A Classroom with a View≫(2017)は、ある日の光景ではない。
学校で営まれる日々の活動を、季節ごとにひとつの作品に落とし込んでいるのである。サムは、日本の四季は、そのちがいが際立っており、何より日本人の生活や文化が四季を根底にして成り立っていると感じている。日本でALTを続け10年が経ち、サムの作品は日々を通じ感じたものを記録する仕事へと大きく変わったのである。
2008年、サムはそれを確かめるために日本にやってきたが、彼の思い描いていた日本とはちがう風景があった。しかし彼は自分のイメージを、東京の夜に探し求めたのである。彼は写真家・佐藤信太郎氏に強い影響を受けているという。しかし両者の「東京の夜」はまったくちがう印象を受ける。
サムの代表作である≪Land of Technology≫(2014)は、日本人の私にとって異次元の世界に映る。人の気配、雑踏、臭いが徹底的に消し去られ、時間も感じさせない無機質な世界である。
一方、佐藤信太郎氏の作品からは、人びとの生活感や人間模様、喧噪、アジア的空気感ともいうものが強烈に感じられる。
このちがいはどこから生じるのだろうか。佐藤信太郎氏は「東京の今を、未来に残す記録と、歴史を背景としたその場所特有の雰囲気にこだわっている」という。しかし、サムは、あくまで自分で思い描いていた未来的な世界を、現実のなかに追い求めている。東京の夜景に、自分のイメージを重ね、切り取り、そして高度なレタッチの技術を駆使して、作り上げているのである。
さて最新作の≪A Classroom with a View≫(2017)は、ある日の光景ではない。
学校で営まれる日々の活動を、季節ごとにひとつの作品に落とし込んでいるのである。サムは、日本の四季は、そのちがいが際立っており、何より日本人の生活や文化が四季を根底にして成り立っていると感じている。日本でALTを続け10年が経ち、サムの作品は日々を通じ感じたものを記録する仕事へと大きく変わったのである。
佐藤 聡史(丸山晩霞記念館)
Futuristic Megalopolis and Farming Village - The Dream and Reality of an English Teacher
Sam grew up in England where his daily life was flooded with video game machines, IT and animation films, all of which were made in Japan and strongly aroused images of Tokyo as a futuristic megalopolis in his mind.
His work entitled “Land of Technology,” depicts an inorganic world from where signs of life, crowds and time are erased. The artist executed his work by layering images of his own on film of Tokyo at night with other images by trimming sections from each, utilizing his highly skilled retouching technique.
Another work entitled “A Classroom with a View,” is presented as a series of four works representing the four seasons of school life. His ten years in Japan as an Assistant Language Teacher (ALT) transformed his work into one which records his everyday impressions of daily life.
His work entitled “Land of Technology,” depicts an inorganic world from where signs of life, crowds and time are erased. The artist executed his work by layering images of his own on film of Tokyo at night with other images by trimming sections from each, utilizing his highly skilled retouching technique.
Another work entitled “A Classroom with a View,” is presented as a series of four works representing the four seasons of school life. His ten years in Japan as an Assistant Language Teacher (ALT) transformed his work into one which records his everyday impressions of daily life.
Sato Satoshi(Maruyama Banka Memorial Museum)
開催会場
東信
丸山晩霞記念館
- 住所
- 〒389-0515
長野県東御市常田505-1
- 電話番号
- 0268-62-3700
- 開館時間
- 9:00~17:00
- 閉館日
- 無休
「シンビズム -信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち-」会期中は開館時間、閉館日が通常と異なっております