Artist
参加アーティスト
常田 泰由
Yasuyoshi Tokida
>《Drawings》2001−2010年
Works & Comment
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私は制作をほんの小さなドローイングからはじめた。それは、写真や印刷物も含め、そこにあるもののかたちをみて、ほんの数秒の間に、一筆書の線や、2色に塗りわけられるような線などのいくつかのルールで描いた簡単なもので、自分自身にも理解されることを求めない日常の切れ端のようなものであった。それらを絵とするには、しばらく時間をおく、たくさんのなかから選び出す、版に起す、プレス機で刷るという過程が必要で、それぞれの過程で、対象に迫るのではなく、対象はむしろ私から一歩ずつ離れていき、ある距離をとったところで絵は完成する。また、近年制作している着色した紙を、切り抜き並べたコラージュでも、切り抜いたかたちと、切り残しのかたちが共存し、双方で距離を取っている。このように、対象と私、対象と対象の距離を測っていくことが、私の制作なのではないかと考えている。
Whenever I execute my printing, I always begin with small drawings. Looking at shapes of objects around me, including photos, printed matter and so on, I draw simply according to some standards set by myself, such as one-stroke drawings, two-tone lineal drawings and so on. I t takes only a second or so to finish one drawing. My drawings are just like the fragments of daily life, which exists as it is and understanding it is irrelevant. To render finished prints from my drawings, it is necessary to go through several processes such as leaving them for some time, selecting shapes from a plentitude of drawings, making preparation for the woodblocks, and preparing them to be printed in a pressing machine. The distance between the shapes I select, and myself separates farther and farther, according to those processes.
When I maintain a certain distance from shapes, my artwork is completed. Additionally, in my collage works, which I embarked on recent years, shapes of both colored, cut-out paper, and its residue co-exist, but exhibit a certain distance from each other. I think that measuring distance between objects and myself, as well as between one object to another, is the way I execute my art.
When I maintain a certain distance from shapes, my artwork is completed. Additionally, in my collage works, which I embarked on recent years, shapes of both colored, cut-out paper, and its residue co-exist, but exhibit a certain distance from each other. I think that measuring distance between objects and myself, as well as between one object to another, is the way I execute my art.
>《f.p.》2017年
>《t.p.》2017年
>《c.f.》2017年
Profile
常田 泰由 Yasuyoshi Tokida
版画
- 1980
- 長野県生まれ
- 2004
- 東京造形大学造形学部絵画専攻卒業
- 2006
- 愛知県立芸術大学大学院美術研究科油絵専攻修了
- 2010
- 東京造形大学非常勤講師(〜2014、2015〜)
- 2015
- 武蔵野美術大学非常勤講師
主な受賞歴
- 2003
- 第28回全国大学版画展収蔵賞
- 2004
- 第29回全国大学版画展収蔵賞
- 2005
- 第30回全国大学版画展収蔵賞
- 2006
- 愛知県立芸術大学大学院修了制作買上げ
主な作品発表歴
- 2009
- グアンラン国際版画ビエンナーレ(グアンラン美術館/中国)
「版画―日本の第二言語」(日本美術技術博物館マンガ/ポーランド)
- 2011
- 「第7回造形現代芸術家展」(東京造形大学附属横山記念マンズー美術館/東京都)
- 2014
- 「4つの窓 長野ゆかりの版画家4人展」(須坂版画美術館/須坂市)
- 2015
- 「上諏訪中学校+常田泰由 かたちをみつけて」(諏訪市美術館/諏訪市)
- 2016
- 「Drawings」(switch point/東京都)
「ZOKEI NEXT 50」(Arts Chiyoda 3331/東京都)
- 2017
- 「collage」(gallery N/愛知県)2013、2011、2008
「Views of Contemporary Japanese Printmaking」(Famagusta Gate/キプロス)
「Poetry of place 場所の醸す詩情」(The Koppel Project/イギリス)
「piece」(Gallery惺SATORU/東京都)
学芸員の解説
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かたちをみつけて−常田泰由の版画
私たちの身の周りには「かたち」があふれている。花瓶の形、重ねて置かれた本の形、遠くにみえる工場のシルエット…。常田泰由氏は、そんな「かたち」を集めて作品化している。
「かたち」集めのスタートは、身の回りのあらゆるものの形の素描からはじまる。学生時代から描き続けられてきたドローイングの数は数千にもおよぶという。ドローイングは輪郭を集めるように描かれ、そのなかから「かたち」を選び、そこを出発点として版画にしていく。
選ばれた「かたち」は型紙となり、刷紙のうえで均一に油性インクをのせた版木が置かれ、プレス機に通される。型紙のあるところはインクが付かず、型紙のないところはインクが付くというシンプルな方法で作品はできている。これは、木版ではあるが版木を彫って製版するのではなく、木版と、型紙を使用するステンシルを合わせた技法だといえる。プレス機を通した瞬間に作品が生まれるこの技法は、もともと何気なく描きとめられたドローイングを作品とするのに適した瞬間性を持っている。
ほかにも、「かたち」への興味からコラージュ作品も制作している。コラージュの制作では、「かたち」の探し方は変化し、どこか現実にあるもののなかからではなく、紙のうえで色と形のバランスが整う瞬間を探し、作品とする。また、紙を切り抜いたあとの紙片を使用することもあり、意図したもの、しないもの、意識と無意識それぞれの「かたち」を組み合わせたコラージュを元に、版画作品にも変換している。そうした過程を経て、作為のあまりみえてこないような、作家の目指す、ただ寡黙にそこにある、浜辺の石や無銘の古壺のようなあり方に近づいていく。
制作過程を経て「かたち」は少しずつ変化する。発見された「かたち」は、ドローイングの線画となり、型紙となる。プレス機に通され版画作品となる。もとのモチーフの要素が消えていき、シンプルな「かたち」として絵になっていく様子を、モチーフの単語の頭文字のみが残ったタイトルが表わしている。
「かたち」集めのスタートは、身の回りのあらゆるものの形の素描からはじまる。学生時代から描き続けられてきたドローイングの数は数千にもおよぶという。ドローイングは輪郭を集めるように描かれ、そのなかから「かたち」を選び、そこを出発点として版画にしていく。
選ばれた「かたち」は型紙となり、刷紙のうえで均一に油性インクをのせた版木が置かれ、プレス機に通される。型紙のあるところはインクが付かず、型紙のないところはインクが付くというシンプルな方法で作品はできている。これは、木版ではあるが版木を彫って製版するのではなく、木版と、型紙を使用するステンシルを合わせた技法だといえる。プレス機を通した瞬間に作品が生まれるこの技法は、もともと何気なく描きとめられたドローイングを作品とするのに適した瞬間性を持っている。
ほかにも、「かたち」への興味からコラージュ作品も制作している。コラージュの制作では、「かたち」の探し方は変化し、どこか現実にあるもののなかからではなく、紙のうえで色と形のバランスが整う瞬間を探し、作品とする。また、紙を切り抜いたあとの紙片を使用することもあり、意図したもの、しないもの、意識と無意識それぞれの「かたち」を組み合わせたコラージュを元に、版画作品にも変換している。そうした過程を経て、作為のあまりみえてこないような、作家の目指す、ただ寡黙にそこにある、浜辺の石や無銘の古壺のようなあり方に近づいていく。
制作過程を経て「かたち」は少しずつ変化する。発見された「かたち」は、ドローイングの線画となり、型紙となる。プレス機に通され版画作品となる。もとのモチーフの要素が消えていき、シンプルな「かたち」として絵になっていく様子を、モチーフの単語の頭文字のみが残ったタイトルが表わしている。
丸山 綾(諏訪市美術館)
In Search of Shapes - The Prints of Tokida Yasuyoshi
Tokida Yasuyoshi sketches everything around him, out of which he selects “shapes” for his prints.
“Shapes” are utilized as patterns which are rendered on paper. Then the paper with those patterns goes through a pressing machine together with a wooden plate applied with oil-based ink.By utilizing this technique combining woodcut printing with stencils, you see the finished work immediately after the paper passes through the pressing machine. This technique also makes it possible to transform his spontaneous drawings to finished works.
These “Shapes” change in time and process. The form of the original shape disappears, leaving just simplified shapes in his prints. Then finally, only initials representing the title of the work, chosen by the artist, become its true title.
“Shapes” are utilized as patterns which are rendered on paper. Then the paper with those patterns goes through a pressing machine together with a wooden plate applied with oil-based ink.By utilizing this technique combining woodcut printing with stencils, you see the finished work immediately after the paper passes through the pressing machine. This technique also makes it possible to transform his spontaneous drawings to finished works.
These “Shapes” change in time and process. The form of the original shape disappears, leaving just simplified shapes in his prints. Then finally, only initials representing the title of the work, chosen by the artist, become its true title.
Maruyama Aya(Suwa City Museum of Art)
開催会場
南信
諏訪市美術館
- 住所
- 〒392-0027
長野県諏訪市湖岸通り4-1-14
- 電話番号
- 0266-52-1217
- 開館時間
- 9:00~17:00
- 閉館日
- 月曜と祝日の翌日休
「シンビズム -信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち-」会期中は開館時間、閉館日が通常と異なっております