ARTISTS
西澤 千晴
絵画
WORKS & COMMENT
作品&コメント
《Green fields》(2013年)
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私たちは、好むと好まざるとに関わらず、取り残されないようにするのに精いっぱいで将来への見通しなど考えられない、日常生活の現実と関わり続けなければならないようです。私自身、この「日常生活」で起こるさまざまなできごとに翻弄され、湧き上がる感情をなだめ、どうにかつじつまを合わせながらやり過ごしています。
私の作品はこうした「現実」をガラス一枚隔てた向こう側からぼんやり眺めている、心の内のもうひとりの自分によって描かれたものかもしれません。これらの作品は人々の悩みや苦しみを癒し、救済するというようなことはできないのでしょうが、それでも観る人のなかにもいるであろう、似たようなもうひとりを呼び起こすことができればいいなと思っています。
最近では、この何も力を持たないはずの「向こう側の人々」が大挙して押し寄せ、こちらの世界をどうにかしてしまう…そんなイメージを思い描くようになってきました。
私の作品はこうした「現実」をガラス一枚隔てた向こう側からぼんやり眺めている、心の内のもうひとりの自分によって描かれたものかもしれません。これらの作品は人々の悩みや苦しみを癒し、救済するというようなことはできないのでしょうが、それでも観る人のなかにもいるであろう、似たようなもうひとりを呼び起こすことができればいいなと思っています。
最近では、この何も力を持たないはずの「向こう側の人々」が大挙して押し寄せ、こちらの世界をどうにかしてしまう…そんなイメージを思い描くようになってきました。
Like it or not, it looks like we have to continue to deal with the reality of daily life, busily catching up with others, and cannot afford the time to develop prospects for the future. I, myself, am at the mercy of various events in my daily life, trying to soothe the feelings which enter my mind, let them pass, and somehow try to maintain a kind of consistency among them.
My works might be painted by another “self” residing deep in my mind, who is looking vaguely at “reality” from the other side through an imaginary sheet of glass. Even though these works might not be able to heal and quell people’s minds, I hope my art can awake the feelings within viewers, who might be similar to me, even if it is only a single person.
Recently, images such as the “people of the other side,” who don’t have any power, enter this world in full strength, and somehow change it ... conjure up in my mind.
My works might be painted by another “self” residing deep in my mind, who is looking vaguely at “reality” from the other side through an imaginary sheet of glass. Even though these works might not be able to heal and quell people’s minds, I hope my art can awake the feelings within viewers, who might be similar to me, even if it is only a single person.
Recently, images such as the “people of the other side,” who don’t have any power, enter this world in full strength, and somehow change it ... conjure up in my mind.
《楽しいパレード-b》2017年
《Like today's "in" power》2008年
《fixing a hole》2013年
NEWS
西澤 千晴の関連情報
Profile
プロフィール
西澤 千晴NISHIZAWA Chiharu
絵画
- 1970
- 長野県坂城町生まれ
- 1993
- 東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒業
- 1995
- 東京造形大学版表現コース研究生修了
- 2007−2010
- 東京造形大学非常勤講師
AWARD
おもな受賞歴
- 1991
- 信州版画展入賞
- 1993
- 第4回日仏会館ポスター原画コンクール入賞
第2回さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ入賞
- 2004
- VOCA 展2004佳作賞
RELEASE
おもな作品発表歴
- 2002
- 個展「郷土の作家展」(上山田文化会館/千曲市)
- 2003
- 個展「project N-13」(東京オペラシティ アートギャラリー/東京都)
- 2005
- 個展「ハッピーガーデン」(東京画廊/東京都)
- 2006
- 個展「Enjoy car life」(America Johnson Contemporary/香港)、個展「Dream house」(Do Art Gallery/韓国)
- 2007
- 個展「For beautiful human life」(東京画廊/東京都)、Young Japanese Painters(オランダ)、Thermoline of art New Asian waves(ドイツ)、第3回造形現代芸術家展「場の記憶~虚実の狭間で」(東京造形大学付属横山記念マンズー美術館/東京都)、スタインウェイジャパン設立10周年記念アートケースピアノに絵画制作
- 2010
- 個展「Exodus」(形而上画廊/台湾)
Japanese color(Gallery IHN/韓国)
- 2011
- 個展「Family tree」(東京画廊/東京都)
Future pass~From Asia to the world(イタリア、オランダ、台湾)
- 2015
- 個展「Wonderland」(形而上画廊/台湾)
Japanese artists group exhibition(東京画廊+B・T・A・P/中国)、ライブペインティング「Taipei international art fair 2015」(Taipei World Trade Center/台湾)
- 2016-2017
- 信濃毎日新聞「思索のノート」挿絵
COMMENTARY
学芸員の解説
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俯瞰の視点で見つめる
現代社会のリアル
スーツ姿のサラリーマンたち、並び建つ住宅団地、ささやかな幸せ、ラッシュアワー。西澤千晴の作品には大都市に生活する無数の人々の姿が描き出されている。その群像はひたすら淡々と描かれているがゆえ、そこに潜む寓意を読み解きたいと思わせる。読み解こうとする目は、細部まで丹念に描き込まれた人物たちの繰り広げる「ものがたり」に行き着く。ひとつの情景を読み取り、次に移ってゆく。まるで絵巻物のようである。
作家は大学時代に版画を学び、抽象表現に重点を置いていた。その後、アクリルで人物を描くようになるが、版画の単色の刷り重ねイメージは、作家の感性と共鳴するものとなり、アクリル画になった現在もその影響を残している。鮮やかに描き分けるのはそのためである。いずれの作品も離れた位置から似たような服装や見た目の人物がさまざまなドラマを繰り広げる。作家自身も現実社会のなかではその真っただ中にいるはずなのであるが、「なるべく客観的に俯瞰したいと思って」この構図を選んでいる。表情や空間の無機質な装いはこの客観性とも無関係ではない。それが人物たちの直面する人生の場面を鮮明にあぶり出す。
主題となるのはサラリーマン、家族、子ども、社会の世相などさまざまだ。夢のありそうなネーミングの作品でも画面をつぶさに見ると、実はそんな理想的現実ばかりではないことがわかる。どうしようもない喜怒哀楽や群衆のモザイクのなかで生きていかざるを得ないわれわれなのだと悟らされる。作家が描く「おじさん」たちの姿はその象徴だ。誰かの幸福は誰かの犠牲のうえに成り立っている。都会ではそれが露骨に見えてしまう。しかし、こんな世の中であっても私たちは生きていくのである。缶コーヒーのCMよろしく「このろくでもない、すばらしき世界」を生きていくのだ。宿命を笑い飛ばし、「それでも生きていくしかないわな!」と思えるのは、この作家の描く現代社会のリアルに泣き笑いの共感ができるからだ。
作家は大学時代に版画を学び、抽象表現に重点を置いていた。その後、アクリルで人物を描くようになるが、版画の単色の刷り重ねイメージは、作家の感性と共鳴するものとなり、アクリル画になった現在もその影響を残している。鮮やかに描き分けるのはそのためである。いずれの作品も離れた位置から似たような服装や見た目の人物がさまざまなドラマを繰り広げる。作家自身も現実社会のなかではその真っただ中にいるはずなのであるが、「なるべく客観的に俯瞰したいと思って」この構図を選んでいる。表情や空間の無機質な装いはこの客観性とも無関係ではない。それが人物たちの直面する人生の場面を鮮明にあぶり出す。
主題となるのはサラリーマン、家族、子ども、社会の世相などさまざまだ。夢のありそうなネーミングの作品でも画面をつぶさに見ると、実はそんな理想的現実ばかりではないことがわかる。どうしようもない喜怒哀楽や群衆のモザイクのなかで生きていかざるを得ないわれわれなのだと悟らされる。作家が描く「おじさん」たちの姿はその象徴だ。誰かの幸福は誰かの犠牲のうえに成り立っている。都会ではそれが露骨に見えてしまう。しかし、こんな世の中であっても私たちは生きていくのである。缶コーヒーのCMよろしく「このろくでもない、すばらしき世界」を生きていくのだ。宿命を笑い飛ばし、「それでも生きていくしかないわな!」と思えるのは、この作家の描く現代社会のリアルに泣き笑いの共感ができるからだ。
小笠原 正 (上田市立美術館)
The Reality of Modern Society Seen from a Bird’s Eye Point of View
NISHIZAWA Chiharu depicts the lives of numerous people who live in the megalopolis of Japan in the 21st Century. There are various kind of models in his art, which include salaried workers, their families, children, and the aspects of society itself. Even though the artist himself is standing in the very heart of his theme, he prefers to work objectively from a lofty, distant angle when he renders his works.
There are countless people packed in this megalopolis. They spend their daily lives indifferently, fraught with the chaos of their dreams and hopes and reality, seemingly unaware of its contradictions. Nishizawa is a unique and rare artist who expresses calmly, but vividly, the joy, sorrow and fate that subsist in current Japanese society.
There are countless people packed in this megalopolis. They spend their daily lives indifferently, fraught with the chaos of their dreams and hopes and reality, seemingly unaware of its contradictions. Nishizawa is a unique and rare artist who expresses calmly, but vividly, the joy, sorrow and fate that subsist in current Japanese society.
Ogasawara, Tadashi (Ueda City Museum of Art)
EXHIBITION MUSEUM
開催会場の情報
丸山晩霞記念館
東信エリア
- 住所
- 〒389-0515
長野県東御市常田505-1
- 電話番号
- 0268-62-3700
- 開館時間
- 9:00~17:00
- 閉館日
- 無休
丸山晩霞記念館はシンビズム2開催期間中(2018/12/01~12/24)、丸山晩霞作品の展示はございませんのでご注意ください。
「シンビズム2 -信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち-」会期中は開館時間、閉館日が通常と異なっております