ARTISTS作家一覧
丸田 恭子MARUTA Kyoko

略歴
| 長野県長野市生まれ | |
| 1978 | 明治薬科大学卒業 |
| 1982-1987 | 渡米、アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークにて学ぶ(-1984) |
| 1997-2000 | 二代目高橋竹山(津軽三味線)の舞台美術を手掛ける |
| 2000 | 画集『波動の絵画』(クリエイティブセンター)刊 |
| 2005 | ベルリンにてアーティストインレジデンス |
| 2007-2008 | 信濃毎日新聞「風土と哲学」内山節さんの文章に絵を掲載 |
おもな作品発表歴
| 1993 | 個展(ギャラリーαM /東京都) |
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| 1995 | 個展「丸田恭子の世界」(駒ヶ根高原美術館/駒ヶ根市)、「VOCA展’95」(上野の森美術館/東京都)、「線について」(板橋区立美術館/東京都) |
| 1997 | 個展(高島屋コンテンポラリースペース/東京都) |
| 1999 | 個展(SOKO東京画廊/東京都)、「現代日本絵画の展望展」(東京ステーションギャラリー/東京都) |
| 2000 | 個展(新宿パークタワー1Fギャラリー・1/東京都) |
| 2002 | 「日中女性絵画展」(現代中国美術館/小布施町)、「彼女達が創る理由」(長野県信濃美術館/長野市) |
| 2003 | 「アートウォッチングpart2」(宮城県美術館/宮城県) |
| 2005 | 「素材とコンセプト」(小海町高原美術館/小海町) |
| 2006 | 「6の視点展」(おぶせミュージアム・中島千波館/小布施町)、立川国際芸術祭「Face」(東京都) |
| 2009 | 「信州美術作家展 創造の表情」(駒ヶ根高原美術館/駒ヶ根市)、「信濃からあつい風」(関口美術館/東京都) |
| 2010 | 上海アートフェア(中国) |
| 2013 | 個展「地球の外側でYESと言う」(宇フォーラム美術館/東京都)、「Japanese Contemporary Art」(中国) |
| 2014 | 個展(Marie Gallery/東京都) |
| 2017 | 「2人展」(宇フォーラム美術館/東京都)、個展「丸田恭子展―Nagano Alternative Prevention」(フラットファイルスラッシュ/長野市) |
| 2017,2019 | 「表層の冒険―抽象のアポカリプス」[谷川渥企画](ギャラリー鴻/東京都) |
| 2018 | 「Japanese Contemporary Exhibition」(スリランカ) |
| 2019 | 「Japanese Art」(アラブ首長国連邦) |
| 2020 | 「日本の美術を貫く炎の筆<線>」(府中市美術館/東京都) |
おもな受賞歴
| 2009 | 駒ヶ根高原美術館賞受賞 |
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STATEMENTステートメント
絵画的世界認識
次元が違うかのようなさまざまな空間を内包し、螺旋状に複雑に絡み合う線の運動のダイナミズムに圧倒される。円環を成すその運動は水平方向に空間を拡張しつつ光を反射する金箔の背景との相互浸透を繰り返しながらキャンバスを取り巻く外部空間へも浸透し、観る者を別次元に誘い込む。丸田恭子のアトリエに立てかけられた本展出品作《円になる》(p80)に対峙したとき、この画家の背景には何があるのか、そして平面としての作品が空間に在るとはどういうことなのかを改めて考えさせられた。
丸田は、少し変わった経歴を持つ画家だ。長野市に生まれた丸田は、幼い頃から絵画に親しんだものの数値とともに論理的組み立てを重ねていくと答えがみつかる数学を好むようになり理科系の道に進む。明治薬科大学を卒業し薬剤師として薬局を営むも世界のなかで独自の美術を探究したい欲求から絵画を学ぶ決心を固め、1982年渡米。ジャクソン・ポロックやマーク・ロスコが学んだアート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークで絵画を2年間学び世界中から集まってくる生徒のなかで線の重要性を知る。線には性格や個性が表れ、感情に支配されがちな色より線や形によって自分の思考を明らかにしていく態度が萌芽する。当時のアメリカは、ネオ・エクスプレッショニズム(新表現主義)の隆盛を迎え、ジュリアン・シュナーベルをはじめとする表現主義やフォービズムから示唆を受けた感情を表現豊かに発露する画家が多く存在した。そんななか渡米して3年目になると丸田は日本人を意識するようになる。薬剤師として東洋医学を扱い東洋思想を修めていた丸田は、「本来異なるものの同一性は理論的には矛盾である。しかし、東洋思想やインド哲学では、異なると思えるすべてのものは根源的には一つであり、すべてが繋がっている。つまり差異を自ら内包する同一であるということになる。二つのものが異なっていてもそれは決して否定関係ではない。」※1と後に語る認識が作品に表れはじめ、帰国後の制作につながり、現在も制作と社会に対する意識の根底にあり続けている。
87年に帰国、のちに「陰陽」と認識するテーマの制作を開始し、「螺旋」「浸透」とそれぞれのテーマが相互に融合しながら変遷していく。「陰陽」では「太極図の陰陽も、陰があるから陽が見えるし、陽があるから影が見えるということである。必ず流れは双方向に向かい、大きなバランスというダイナミズムが働いている。」※1という認識のもと、モノクローム調の濃淡に塗り分けられた背景に力強いストロークの線が浮かぶ。明と暗、静と動、正と負、さまざまな対極の要素が混在しバランスをとり大きな世界をつくっている。自然界は螺旋に満ちている。丸田は、宇宙の星雲や銀河、ヒトのDNAから産道を回転して生まれる生命、電子、世界の神話や巨石文化に至るまであらゆる事象に螺旋構造を見出している。「螺旋」は丸田の制作に一貫して表れる重要な要素であるが、「螺旋」を描こうとして描いているわけではないという。作品は作るものではなく生れるもの、生み出すものであるという認識からもわかるように、それは、絵画を通じて世界を認識していこうとする姿勢である。本展ではドローイングも出品されるが、丸田はドローイングを通し内面から出てくる形を確かめている。先の東洋思想の文脈に「浸透」が表れる。異なるふたつのものの間に分断や拒絶がない丸田にとって魅惑的な世界が展開する。自身のなかで途切れることなく行われている精神と物質との対話を自覚し、日の出前の刻一刻と変化する空の光や、ガラスや水、白磁や青磁の透明性に視覚による意識の浸透を見出し制作している。そして現在は先のテーマすべてを入れた状態で制作を行っている。《円になる》に表れる金箔の採択は琳派の装飾性にみる日本美術の文脈ではなく、物質としての金を意識したものである。金は反応性が低く安定した物質で、展延性に優れ最も薄く延ばすことができる金属である。キャンバスに色を置きそのうえに金箔を貼ることで、それぞれが相互浸透し独特の色とマチエールを獲得している。近年、円形のキャンバスにも取り組むが物質としての金の異次元性、至高性とともに、形としての円は完全をイメージし、フレームとしての円は展示空間に浸透していく。
丸田はほぼ一瞬にしてすべてを開示でき、把握できるのが絵画だという認識のもと、制作を行ってきた。日々の生活の感情的な要素は取り払い、無色、中庸、白紙の状態で絵に取りかかりたいという。そして脳から筋肉への指令が発せられる前に運動準備電位が起こっていることから、脳は精神活動の主人ではなくむしろ物質や身体に対して受動的であるという科学的思考から直観を重視し、意識とは何なのかを命題にしている。培われた科学の見識による科学的世界認識を基底に置き、絵画的世界認識をもって作品を生み出している稀有な作家の表現を、作品の前に立って感じとってほしい。
- 1 丸田恭子『波動の絵画』(クリエイティブセンター、2000年)
小海町高原美術館 中嶋 実
Pictorial Perception of the World
The works of MARUTA Kyoko, which overwhelm viewers by the dynamism created by the movement of their spiral lines complicatedly entwined with each other, which expand even into an outer space beyond the canvas, invite viewers to a different dimension. After becoming a pharmacist, MARUTA went to America and studied painting at the Art Students League of New York, where she noticed the importance of lines and became aware of Oriental thought. After returning to Japan, she created her works with themes such as “Yin and Yang,” “Spiral,” and “Osmosis.” Now, she cleverly incorporates every aforementioned theme in each of her works.
MARUTA’s idea is that painting can reveal and hold everything in a mere moment of viewing.
She is an extraordinary painter who creates works based on the scientific perception she acquired and her own pictorial perception of the world.
Koumi-machi Kougen Museum of Art Nakajima, Minoru





私たちが存在するこの世界とはどんなところなのか。
現代の統一場理論に宇宙を構成する基本的要素、精神が組み込まれなければ真のその解明には至らない。
自然界のあらゆるもの、天体から細胞、素粒子まですべては繋がり呼応している。そして意識や発する思い、言葉は縦横無尽に世界を駆け巡る。
すべてはふたつでできている。目に見える世界と目に見えない世界。それらを統合するかのごとく、絵画としての言語を獲得する度、作品のなかに立ち現れてくる形、要素からさまざまなことを教えられてきた。自分と絵の具の動きが呼応し同調しあったとき、宇宙や意識、生命の謎など探る世界が見えてくる。
20世紀初頭、それまでの世界観を根底から覆し量子力学に大きく関与したニールス・ボーアはキュビズムの収集家で、発想の根源はその絵画にあった。もし自らの作品がこれからの科学の発見、発展の一助になったとしたら至上の喜びである。
What kind of place is the world we exist?
We cannot come up with an absolute answer, unless our spirit – the basic element composing the space – is incorporated in contemporary unified field theory.
Everything in the natural world, from the heavenly bodies to the cells and elementary particles, are connected with each other and interact together. Further, our consciousness, emitted thoughts and words are spreading in all directions throughout the world
Everything consists of two worlds: visible and invisible.
Each time, whenever I acquired a new “language” as painting, I learned various things from the shapes and elements which appeared in my works. When my own self, and the movement of the paints agree and resonate with each other, the world I’m searching for, such as the mysteries of space, our consciousness and lives come to light.
Niels Bohr, who was a major figure in advances in quantum mechanics, overturning the previous views of the world from its very foundation in the early 20th century, was a cubist collector, and his thought originated from cubist paintings. It would be my supreme pleasure if my works contribute to scientific discoveries and its development.