ARTISTS作家一覧
丸山富之MARUYAMA Tomiyuki

略歴
| 1956 | 長野県安曇野市三郷生まれ |
|---|---|
| 1975 | 松本県ケ丘高等学校卒業 |
| 1984 | 東京藝術大学彫刻科卒業 |
| 1986 | 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了 |
おもな作品発表歴
個展
| 1985 | 個展(東京藝術大学展示室/東京都) |
|---|---|
| 1986 | 個展(ギャラリー葉/東京都) |
| 1987/89/91/94/96 | 個展(ときわ画廊/東京都) |
| 1989/97 | 個展(ギャラリーなつか/東京都) |
| 1993 | 個展(なびす画廊/東京都) |
| 1996/99/01/04/06−08/11/12/14/16/18 | 個展(ヒノギャラリー/東京都) |
| 2000 | 個展(ギャラリー深志/松本市) |
| 2003 | 個展(夷隅田園の美術館/千葉県) |
| 2006 | 個展(Gallery Shilla /大邱・韓国) |
| 2019 | 個展(朝日美術館/朝日村) |
グループ展
| 1993 | 「<かたまり彫刻>とは何か」(エスパスOHARA/東京都) |
|---|---|
| 1994 | 「<彫刻>展」(代々木アートギャラリー/東京都) |
| 1996 | 「匍匐は跳躍」(なびす画廊/東京都) |
| 1999 | 「花蓮国際石材彫刻展」(花蓮縣立文化中心/台湾) |
| 2000 | 「春のおくりもの」(なびす画廊/東京都) |
| 2002 | 「東日本―彫刻」(東京ステーションギャラリー/東京都)、「かたちの所以」(佐倉市美術館/千葉県) |
| 2003 | 「第1回中国国際画廊博覧会」(北京・中国)、「第5回雨 引の里と彫刻」(茨城県)、「表象都市metamorphosis」 (広島県)、「−芸術実験展示プロジェクト2003−」(旧日本銀行広島支店/広島県) |
| 2005 | 「Saraylar Symposium」(トルコ)、「石の思考」(東 藝術大学美術館陳列館/東京都) |
| 2006 | 「SINGULAR STONES 2006」(ギャラリーせいほう /東京都) |
| 2009 | 「第8回まつしろ現代美術フェスティバル」(長野市) |
| 2010 | 「第9回まつしろ現代美術フェスティバル」(長野市) |
| 2013 | 「KCA house オープンスタジオ2013」(埼玉県) |
| 2020 | 「<石の彫刻>展」(いりや画廊/東京都) |
| 2021 | 「第2回<石の彫刻>展」(ギャラリーせいほう/東京都) |
STATEMENTステートメント
石と対峙し生まれるもの
丸山富之は石の彫刻家である。2019年の個展「丸山富之 石の彫刻 水平の空 垂直の夢」(朝日美術館)は、柔らかな自然光と大きな作品群が一体となり風格ある空間を作り出していた。彫刻と空間の関係を作り上げるために、光、影、天地、左右との関係を考えながら、相互に響き合う地点を探る。すると作品と場が連続性をもち、生き生きとした彫刻空間になるのである。
丸山のアトリエに伺うと、作品の形になる前の大きな石がいくつも置かれていた。使用される石の多くは長崎県の諫早石である。砂岩できめが細かく、グレーやベージュの色合いが温かみを感じさせるが、加工の難しい素材である。そしてさらに強固な素材が黒御影石。いずれも制作道具はノミとハンマー、砥石、グラインダーなど比較的シンプルであるから、想像を超える制作時間が費やされていることになる。「ここで削るんです」と案内された屋外の場所はその時間を包み込む主のようにも見えた。制作の途中、丸山は自然光との兼ね合いを見るため、早朝の日の出のころに作品を見にくるという。日中でも日没でもない、朝にしかない光の反射を見ることで石の面の表情を確かめているのである。
丸山の彫刻を理解する上で重要なテーマのひとつが「水平と垂直」である。水平に堆積した砂岩は、「地平の広がり」を象徴する。地面と空との関係で見ると「地面と空のあいだ」にあるものであり、大きくは「地球の表面」※1である。これはやがて宇宙へとつながっていく。《あかつき》は、繊細なまでに薄く彫り出された水平面から垂直面がスッと立ち上がっている。垂直面は不思議と水平面をあちらとこちら側に分断する。それは視線を遮る人為的な境界であり、たとえば国の東西、人種の壁といった緊張感ある境をも連想させ、見るものに強いイメージを与える。
石の塊にひたすらノミを当てていくと石の体積は減ってゆくのだが、「自分の抱える空間を増やしていくので、石を彫れば彫るほど作品は大きくなる」※2という。丸山は彫る行為により、空間を自身の身体に内包させているのだろう。作品の造形に着目すると、水平面は下方にやや膨らみがあり、地面から浮遊しているようにも見えるが、わずかな設置面で自立している。この膨らみは他の作品にも多く見られるのだが、これによりゆるやかな光の変化が生まれる。と同時に、彫刻の大胆な形の中に緻密さを持たせている。ただ実はこのゆるやかな曲面の加工こそ、気の遠くなるような作業なのだ。
そしてもうひとつのテーマ、「時間と空間」が強く表現されたものが、《地》のシリーズである。分厚い石層に空いた小さな穴。石の裏側から表側に向かって貫かれた一本の筋が、時間の奥行きを表している。石の塊からL字にその形を見出していく制作過程とは異なり、手前から石層の奥へ、すなわち現代から過去へと意識をむけていることのあらわれである。逆に、奥から手前に時間が進むとみると、今、ここで生まれ続けている生命をも感じさせるのである。何かが生まれ続けることによって紡がれる「時間」を訴えている。
2023年の個展「丸山富之水平の空-おもかげ」(いりや画廊)では、《眠り》《目覚め》《始原》《素行》というタイトルの作品が発表された。言葉から丸山の彫刻を類推していくことは適当ではないかもしれないが、生命感をも含んだこの作品群からは、言葉の意味が作品に影響したであろ
うことが考えられる。ある時、胎児の世界における「根源の形象」※3
という言葉に触発されたという。胎児の顔貌にただよう、どこかしら動物らしいおもかげ、未分化であるものにも、何かその種と区別するイメージがある。そうした「原形」に対する意識が込められている。
何千万年という年月を経てできた石層に思いを馳せ、石に寄り添い、対峙しながら、究極まで形を突き詰める。丸山はノミをあてながら石との境界を探り、そのはざまに立つことによって、言葉では言い当てることのできない、人々の営みや流れてきた時間、今生きている空間、そして生まれ出づる生命に共通する何かを体現しているのではないだろうか。
- 1『MARUYAMA TOMIYUKI 2018-2021』(図録、朝日美術館・ヒノギャラリー、2021年)
- 2 丸山富之『向こう側とこちら側』(小冊子、2011年)
- 3三木成夫『胎児の世界』(中公新書、1983年)
安曇野市教育委員会 塩原理絵子
About the Sculpture of MARUYAMA Tomiyuki
MARUYAMA Tomiyuki continues to produce sculptures using stones as material. Especially, he has used Isahaya-stones quarried in Nagasaki Prefecture. He chisels rectangular stone blocks earnestly to finish his works. While chiseling repeatedly, the volume of the stone decreases. However, the artist expresses, “the more I chisel the stone, the bigger my work becomes because the space I possess in my work becomes larger and larger.” Thus, the horizontal plane that is rendered this way, spreads to the ends of the universe. When a vertical plane stands up there, a border suddenly appears. His works invite viewers to imagine the earth as an expanse with artificial borders on the ground reminding them of time and space.
Azumino-shi Board of Education Shiohara, Rieko








私は安曇野市の真ん中で生まれ育った。安曇野は松本盆地の大きな平、空は広くその周りをぐるりと山に囲まれている。2019年、朝日美術館での個展では、自然光の降り注ぐドーム型の空間に水平面と垂直面とからなるL字型の作品をぐるりと並べた。それは多くの人に私の生地との関連を思わせたらしかった。
私の彫刻はほぼ水平面と垂直面で出来ている。水平面を彫っている時、私のノミは上に、空に向かっている。水平面を彫るということは空間の拡がりを彫るということでもある。垂直の面を彫っている時、私のノミはこちら側に向かっている。こちら側を見ることは同時に向こう側を見ようとすることでもある。
そういえば、少年の頃、水田の広がりの空の下で、あの山の向こうには何があるのだろうと思っていたなあ。今回の小海町高原美術館の展示では、前方、上方(空)に加えて下方(地下)への視線で考えている。
I was born and raised in the center of Azumino City. Azumino is an open field located in the Matsumoto Basin, where the sky is wide and surrounded by mountains. In 2019, at my solo- exhibition, I placed L-shaped works consisting of horizontal and vertical surfaces, along the wall in the domed space illuminated by natural light. Many people seemed to have recognized the relationship between my works and my place of birth.
Most of my sculptures consist of horizontal and vertical surfaces. When I am chiseling a horizontal surface, my chisel aims upward toward the sky. Chiseling a horizontal surface means, in other words, to chisel the spread of space. When chiseling a vertical surface, my chisel moves toward my side. Seeing my side means, at the same time, to see the other side.
In my childhood, I remember, I was standing under the sky, at a place spread wide with rice fields, and wondering what was on the other side of the mountains.
At this exhibit in the Koumi-machi Kougen Museum of Art, I am planning to display works incorporating a point of view downwards to the basement, along with points of view forward and upward toward the sky.