ARTISTS作家一覧
長門裕幸NAGATO Hiroyuki

略歴
| 1957 | 長野県千曲市生まれ |
|---|---|
| 1983 | 東京藝術大学油絵科卒業 |
| 1985− | 県立高校教諭(長野西高校、篠ノ井高校他) |
| 1995 | 大町市美麻に穴窯を築く |
| 2023 | 北斗会代表、屋代南高校勤務 |
おもな作品発表歴
| 1987 | 東京セントラル美術館油絵大賞展(東京セントラル美術館/東京都) |
|---|---|
| 1989 | JAPAN大賞展 |
| 1995− | 陶芸による展示会多数 |
| 2007−毎年 | QUEST(高校美術教師による美術展、ホクト文化ホール/長野市) |
| 2008−毎年 | 北斗会洋画展(ギャラリー82/長野市) |
| 2018 | 個展「scene 0」(ギャラリー82/長野市) |
| 2022 | AST展(千曲市アートまちかど/千曲市) |
STATEMENTステートメント
現実と幻想、融合と共鳴の先に広がる深遠なる光景
長門の作品から漂う神秘的な気配、強いオーラ…。様々な対象物が絡み合い形成された画面に吸い込まれるように作品の前に立つ。
すると辺りの緊張感をそっとかき消すかのような何かが静かに語りかけ、作品の根底へと迎え入れてくれる。暗示されるのは彼が対峙したであろう死と生、自然への畏怖と憧憬、それらに伴う喪失と再生。
画題そのものが背負う重量感は、深みを帯びた独特な色調により厳粛さを増しながらも決して暗い印象で沈み込むことはない。
それは変幻自在なタッチ、点在するアクセント、多彩な素材で構成される複雑な画面が、ほのかに浮かび上がるコントラストやリズム感に促されて作家の純粋な想いを少しずつ解き明かすからなのであろうか。
押し寄せる重厚感に圧倒されながらも眼を凝らしていると、やがて救いにも似た安堵感が差し込み、胸の中が温かいもので満たされていく。
3年間の浪人時代を経て東京藝術大学油絵科を卒業後、美術教師と美術家という2つの姿を全うする長門。県内の高校を教育者として渡り歩く中、彼は創作者としての自らの姿や気迫を生徒達に示し鼓舞しながら導いてきた。
旧更埴地区8つの高校美術班で作る「8高校展」からご縁を頂いて約8年。生徒たちとの交流を垣間見るたびに美術教師としての長門は、時に厳しくも実に心優しく人間味あふれる素晴らしい師だと感じる。彼の背中を追いながら生徒たちは著しい成長を遂げている。
自分が抱く長門の世界は「とにかくすごい」、その一言に尽きる。パワフルでダイナミックな作風、描きこまれた構図は様々な表情を見せながら挑んでくるようだ。彼の作品に向かう時は、生半可な気持ちではいけないのだと考える。一見厳格でありながらもその中に存在する心地よい温かさに、ようやく気付けるようになってきた。
《頭無し》で長門は、奥深い森の貯水池に川崎浮島工業地帯の夜景を落とし込んだ。
守り継がれる自然が与えし水源「貯水池」と人間が創造した都市部の「工業地帯」。
地球上のあらゆる生命体の頂点に立つ人間は、己の存在を守るために自然開発や産業化を先導し続けてきた。今後も歩み続けるだろうその道程は、最終的に自然を破壊し、地球を脅かしはしないか。
しかし、長門が一心に見つめ、絵画という手段で融合させた「自然」と「工業地帯」には、そのような危惧や不安感は存在しない。
人知れぬ美しい森の緑や貯水池の水面は、徐々にトーンを落として工業地帯の大地となり、プラント群から立ち昇る煙や照明が混ざりあった人工的な夜景は、貯水池の水面に溶け込んでいく。
そこに在ろうとする自然、進化し続ける現代社会は対極にありながらも互いに受容しあい調和し、新たなる光景となった。
作品から示唆されるものは人間主動の現代社会への否定ではなく、その力強さへの賛美、人間と自然が共生する未来へのビジョン。
故郷の貯水池と都市部の工業地帯という、相反するものを現代の理想郷のように融合し得たのは、作家自身が様々なものに深い愛情を注ぎ、躊躇なく受け入れようとする強い覚悟を持つ人であるからなのであろう。
長門の個展「scene0」を訪れた際、会場に置かれていた冊子をいただいてきた。日々感じ得ること、制作について、生徒への想い…など彼が様々に綴ったものである。数々のエピソードは、彼の作品を頭の中に蘇らせ、未だ自分が会えていない作品への好奇心を掻き立てる。
その中に、春夏秋冬と自転車で山道を行く彼が、道中で出会う美しい自然や野生動物の神秘的な姿に感動と喜びを得る一方、獣の死骸と遭遇し命の儚さや人間と動物の共生について考え込むエピソードがあった。
日々通過する様々な光景は、長門の体内に取り込まれ蓄積され続ける。彼はそれらを絵画制作の中で存分に解放し新しい光景を創造する。
自身が自然と一体化し様々な想いとともに表現した作品群は、観る者を作家が遭遇した場所へ導き、胸迫る臨場感と深い感慨を与えてくれる。
そのような想いを作品《森へ》《FOREST》から得た。エメラルドグリーンを基調とした美しい緑色の交錯、日の光を浴びてテンポよく白いシルエットを現す木々…。《森へ》で作家が捉えた輝きや息吹は、どこまでも眩しく心地よい清涼感を伝えてくれる。
「黒」「赤」「青」「紫」…。インパクトの強い色彩で刷られ力強く描かれた樹皮。そびえ立つ大樹の間から見え隠れする鹿や狐、永遠の眠りにつく狐やモズは、何を想いこの森を漂っているのだろう。生と死が同居する厳かで神秘的な森の物語《FOREST》。
昨夏、様々な形で活動する高校美術教師たちと教え子たちによる現代アート展「AST」が開催された。かつて師弟関係にあった彼らが現在同じ美術家として各々のアートを発信する舞台で、長門の作品はさらなる迫力と輝きに満ちていた。
あらゆるものを受容し具象化させながら、無限の可能性に向かい新たなステージに挑み続けるその生きざまと姿はまさに神々しい。
千曲市アートまちかど 布谷理恵
Profound Scenes Developed beyond Reality and Fantasy, Fusion and Resonance
What NAGATO‘s paintings that give off such mysterious aura imply, are death and life, awe and a longing to nature, loss and regeneration, combined. His motifs, grasped with his keen perception, merge into deep colors together with flexible touches, accents and various materials. In this way, he creates a new world, where light rhythm and a deep sense of relief resonate with each other in a profound atmosphere.
After graduating from the Oil-painting Department of Tokyo University of Arts, NAGATO continues to fulfill two responsibilities as a teacher of arts and a painter. On one hand, he guides his students by showing himself working as a creator, on the other hand, he continues expressing, energetically, his own world of art. His powerful and dynamic way of painting, with its meticulously constructed surface, attract viewers’ attention along with its various artistic expression and abundance of presence.
Chikuma-shi Board of Education,
Culture Division “Art Machikado” Nunoya, Rie










ある時、壁を版木に見立て絵を刻み紙に摺り取ったら巨大な木版画ができることを思い立った。ワクワクした。壁材は10ミリのコンパネ、絵を刻む道具はチェーンソー。実物大の橅の巨木をチェーンソーで壁に刻む、何とも爽快な作業であった。
その橅は集落の水源の更に上、標高1200メートルを示す道標に程近く空に向かって枝葉を広げる樹齢300年の巨木である。いつからかしめ縄が飾られるようになった。橅は豊かな自然を育み美しい水を生む。大自然のフィールドこそが欠かすことのできない創作現場となっている。
描くとは、今目の前にある現象に対してアクションを起こし、その行為がもたらした結果に対してあえて巻き込まれながら新たな未来を作り上げる連続した行為であり、あらかじめ定められた一点に向かう行いではない。その結果、思いもよらない方向性を生み、全く考えもしなかったような着地点を得るかもしれない。しかしそれこそが創造のダイナミズムであり、作品を成立させるうえで必要な力であると考えている。
One time, I came up with an idea that if I engrave a picture on a wall used to resemble a wood block, and print it on paper, it will make a huge woodcut printing. It was exciting! Immediately, I put the idea into practice. Ten mm-thick plywood panel was used for the material of the wall. A chainsaw was used as the tool for engraving. The motif I engraved on the wall was a life-size giant beech tree. It was really exhilarating work!
The mammoth beech tree is 300 years old and stands at a place higher than the water source of the village, near the signpost showing an elevation of 1200 meters, spreading out its branches and leaves towards the sky. At some point, it was wrapped by a Shimenawa, a sacred straw festoon, around its stem. Beech tree nurture nature and clean the water. The greatness of nature is an indispensable site for my creation.
Drawing is a continual action to create a new future taking on the phenomenon in front of you, while you are deliberately involved in the result brought upon by your actions themselves. It is not an action towards a predetermined point. As a result, it may lead you to unexpected directions and landing points which you never thought possible. However, I think that is solely dynamism of creation and necessary power to establish the work.